AFRO FUKUOKA

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VOICE 来福した旬な著名人にお話を聞いてきました。

  • PEOPLE
  • 2012.2.1 Wed

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vol.28 松居大悟

映画監督

INTERVIEW

  • 松居大悟[Daigo Matsuo]
    映画監督
    1985年11月2日生まれ。福岡県出身。慶応義塾大学在学中に、演劇ユニット"ゴジゲン"を旗揚げ。現在に至るまで、全作品の作・演出・出演を手がけている。09年、NHK「ふたつのスピカ」で、同局としては最年少ドラマ脚本家デビューを果たした。07年から自主制作映画を発表し続け、『ちょうどいい幸せ』(監督・脚本)は沖縄映像祭2010年グランプリを受賞。商業映画としては本作「アフロ田中」がデビュー作となる。

TEXT BY

STAFF
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福岡の情報ポータル&ウェブマガジン

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週刊ビッグコミックスピリッツで絶賛連載中の大人気コミック、アフロ田中をご存知ですか?破天荒でもなく、ミステリアスでもなく、類いまれなるパワーや呪文が使えるわけでもない、ただの高校生「田中広」が高校を中退したり上京したりさすらったり、ただただどこにでもいる青年の悶々とした日々の妄想や後悔の念(?)が展開されるコミック。それがアフロ田中です。そんなアフロ田中がこの度まさかの実写での映画化!しかも監督は福岡出身の松居大悟さん!しかも「アフロ」といえば私たち「AFRO FUKUOKA」も黙っていられない!?ということで、キャンペーンとは別に、年末年始で故郷の福岡に帰省されていた松居監督に弊社オフィスへ来て頂いてのインタビューを敢行しました。

芸人さんとかを田中にしたくはないなぁと思ってた。

アフロ田中というと、原作は日常の妄想をストーリーにしているという点でドラマティックな映画にされるというのはとても難しいと思いますし、ましてや監督デビュー作ということで、大変だったと思うのですが、何故アフロ田中を題材にしようと思われたのですか

アフロ田中を映画化しようと言い出したのは僕発信ではないんです。僕も当然のように高校の頃からアフロ田中を読んでましたし、大ファンだったんですけど、まさか映画化しようなんて全く思ってもみなかったんですよ。でも、プロデューサーからお話しをいただいたり、(主演の)松田翔太くんもアフロ田中の大ファンだったりと、いろんなタイミングやきっかけがあわさってというか、奇跡が奇跡を呼んで僕がやらせていただくことになったんです。

はじめに、主演が松田(翔太)さんというのを聞いたときはびっくりしましたが、作品中ではとても田中になりきってましたね!

プロデューサーとも始めから話していたんですけど、芸人さんとかを田中にしたくはないなぁと思ってたんですよね。田中って、繊細な感じだったりとか、いろいろ難しく考えちゃってるところがいいなぁと思えるキャラだと思うので、大味にやっちゃうのは絶対違うと思うんですよね。そこで、松田さんなら、アフロ田中の大ファンでもあるし、役者さんとしても尊敬できる方ですので、危惧しているところも上手くやってくれそうだなぁと思ったとこからお願いしようということになりましたね。

アフロのビジュアルをはじめに見たときもびっくりでしたよ。

あれって、実は原作よりむしろ大きくしてるんですよ。できる限り大きくしてやろうと、いろいろと計算してあの大きさにしたんですけど、結果出来上がった物を見るとやっぱり ちょっと大きすぎたかなとも思いましたね(笑)。撮影中も、他の出演者さんたちがアフロにかぶって見えなかったりして、結構大変だったので、途中からやっぱり小さくしようかとか言ってたんですけどね、なんだか逆に途中から上手い撮り方みたいなのが身に付いちゃいました。

自分にとっての「バイブル」を監督しませんかって言われて。夢が重なりすぎて、ドッキリか何かだと思ってましたよ。

原作でも映画でも、友達だったり先輩だったり、主人公の田中を囲む男子のどうしようもない絡みが描かれていて、たくさんのキャラクターが出てきますが、監督ご自身はどのキャラクターに一番近いと思います?

僕は田中でしょうね、やっぱり。モテたいなーとか思いつつも結局何もできないという。なんだかいろんなことが怖くなって手を出せなくなってしまったりとか。ただ、田中はそこからいつも少しだけ一歩踏み出そうとするとこがあって、そこが僕とは違うんですけど、だからこそ僕は田中から勇気をもらってる気がします。女の子の運転する助手席に座っていて、おっぱいをさわりたいなと思ったらそれをやっちゃう田中に勇気をもらうんですよ(笑)

でも田中はその後、一気にものすごい後悔に陥るというパターンですよね(笑)

そうなんですよ、いちいち後悔する(笑)でも、ほんとに面白いことに、僕が高校の時に「高校アフロ」がはじまって、上京するタイミングで、「上京アフロ」がはじまったんですよ。だからおおげさに言うと、僕は田中と一緒に成長しているような気がしているんですよ。僕らの一つ上の世代って、「稲中(行け!稲中卓球部)」が流行ったじゃないですか。僕ら世代からすると上の世代にとっての「稲中」みたいな存在ってすごく憧れだったんですけど、ちょうどその頃に「高校アフロ」がはじまったんですよ。だからなんか、アフロ田中こそが僕ら世代にとっての「鬱屈した青春のバイブル」みたいな感じでしたよ。しかも僕も天然パーマで、高校時代に縮毛矯正をしたけど、すぐにとれたりするから思い切ってアフロにしたことがあって。当時周りから「田中」って言われるのが、内心嬉しかったりしたんですけど。

そんな、いわゆるバイブルのような漫画を、縁あって監督されたんですね。しかも監督からの発信ではなくですよね?「アフロ田中」やろうよって言われた時ってどうでした?

そうそう。ほんとすごいありがたいことだし、感慨深いものがありますよね。というより、信じられなかったです。夢が重なりすぎて、ドッキリか何かだと思ってましたよ。「アフロ田中って知ってますか?」なんて言われて、「いやそりゃ大好きですよ!」みたいな話になって、「実は今度映画にしようと思うんですよ。」って言われるから、「うわ、そりゃすごいっすね。」なんて完全に他人事ですよ。「脚本家はこの方でいくことになります」「へーすごい!」みたいなやりとりの中で、僕は何故そこに呼ばれたのかも全く検討がつかなくて、話の最後に「じゃあよろしくお願いします!」みたいな感じで終わったんですけど、やっぱり何をよろしくお願いされたのかさっぱりわかんなくて(笑)脚本の手伝いとかしたらいいのかなとか思っていたら、次の打ち合わせの時に、会話の中でさりげに「どう思いますか監督」って言われて、「あれ、俺監督?」みたいな感じで(笑)正直状況を把握するのにすごい時間がかかったから、どうだったかとかいう余韻とか感覚があんまりないんです。まだ若いですし、映画を撮らせてもらえるだけですごいありがたいというのに。

映画には監督の原体験が反映されてたりしてそうですね?

そりゃもう完全にそうですね。僕は久留米の山奥の学校だったんですけど、いわゆるトップグループでもなくて、クラスの隅っこで下ネタをボソボソしゃべっている5人組だったんですよ。だからほんとモロそのものなんですよ。いつもAVの話して、高校終わった後ラーメン食ってみたいな。上京してから実家に帰ると、まだそいつらと必ず会って、結局下ネタ話して終わるという。だからもう、5人の関係性とか空気感とかは、かなり自分と周りの友人を投影したという感じですよね。僕のような「男子校で爽やかな青春を謳歌していない」男子たちって、妙な団結感をもってたりするんですよね。だからきっと喧嘩しても「ごめんな」なんて言わずに、どっかのタイミングで「バカだなー。」「うるせーバカヤロー。」みたいな、笑い合うことでいつの間にか仲直りしているような感じじゃないかなと思って。ふられたら友人に電話して、かかってきた方も、理由を聞かなくても受け入れるみたいな。

特に今回の映画を撮られたことがきっかけで、実際のご友人に対する想いも強くなられたんじゃないですか?

そうですね。でも、最近みんな結婚しちゃって。あいつら知らない間に大人になりやがってみたいな。俺だけこんな感じで(笑)

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原作の力が強くてよかったみたいなところはありますよね。

ちなみに、「アフロ田中」の原作は、日常の物語だから分かりやすいクライマックスとかドラマティックな展開とかが用意されているわけではないから、素人目から見るとデビュー作としてはすごいハードルが高そうだなとか思っちゃうのですが。

そうですね。だから最初からドラマにする必要はないかなと思ってました。田中の日常を「面白い」ものに強引にみせるのは違うと思いましたしね。出来上がってきた脚本が既にコメディとして面白いものに仕上がっていたし、田中は、一生懸命やってることが世間とずれてることが面白いだけで、田中本人は面白いことをしようとしてやっているわけじゃないので、そういった意味では、僕らはドラマティックに撮るのではなく、田中の日常をしっかりと映すということに専念すればいいのかなって思ってました。独り言のシーンがたくさんあるし、変顔とかもたくさんあるから、普通に撮るとすっごいさむいお笑いになっちゃうかなって思って。それは絶対に避けたいと思ってですね、あくまで「日常で」と。そこは主演の(松田)翔太くんとも意識し合いながら、声をかけあって撮ってましたね。

確かに、あのアフロがなければ、いわゆる青年の日常の悩みが描かれている映画になりますよね。でもそこにあのどでかいアフロがあるから、そのズレがあくまで面白いわけであってって感じですよね。

そうですね。なんならアフロである必要も全くないですよね。劇中でもあのアフロをいじるシーンとかないですし、アフロが象徴としてストーリーが動く訳でもないですしね。ただ、当たり前のような展開でも、あのアフロは完全に違和感なんですけどね。

あと、コミックが原作の実写映画ってどうしても似せなくちゃいけなかったり、原作ファンの想いがあったりでキャスティングもかなり大事になってくると思うんですけど、「アフロ田中」ほんとキャスティングが絶妙でしたね。主役の松田さんも、映画になって動いてみると結果違和感なくて、「あ、田中ってたしかにちょっとかっこよかったりするしな。」みたいな妙な説得力を持ってる気もしました。キャスティングでこだわったところとかありましたか?

狙わないようにしようとだけは思ってましたね。プロデューサーの意向として、田中の友人にはイケメンと芸人を一人づつ入れたいというのがあったんですが、僕もそれは悪くないと思って田中圭さんにも出演してもらったりしました。実は田中圭さんも原作の大ファンってことで、等身大な感じをすごく理解して演じてくれましたね。一度田中圭さんに撮影前にお会いした時に、「漫画っぽくいくならそうするし、リアルにいくならそうするけど」って聞かれたことがあって、「リアルでいきましょう。」って返したんですけど、演出といえば正直それくらいで、あとはほんとに細かいことは特に話してないですけど、さすがでしたね。希望通りの自然体でした。

女性キャストや他のキャストへのこだわりはありましたか?

まぁこれはあれですね、エロさを大事にしましたね、なんとも言えない絶妙なエロさというか(笑)それと、リリーさんもそうですけど、原作を好きだという方に出てもらってますね。 辺見さんも、「なんでもいいから出たい!」って言ってくれるくらい原作の大ファンで、「かあちゃんどうですか?」って恐る恐る聞いたら即答でやってくれて、しかもフケメイクも「もっともっと!」ってのってくれて、ちょっとイメージ大丈夫かな?ってこっちが心配しちゃうくらいで。だからほんと、原作の力が強くてよかったみたいなところはありますよね。

実は『AFRO FUKUOKA』をご覧頂いてる方の多くは、どちらかというと女性が多くて、佐々木希さん演じるヒロインのような方やOLの方も多いのですが、「アフロ田中」で男子の妄想を見事に映画化された監督から、そんなみなさんにメッセージをください。

同世代の男の子たちは、あなた方に好かれたいと思ってこんなこと考えているんですよというのを知ってほしいと思います。きれいごとじゃなく、どうしようもなくしょうもないことを考えながら、みなさんへメールを送ってるんですよと。だからあなたがメールを返さないこの1時間、すごい妄想を膨らませながらずっと待ってるんですよと。『アフロ田中』をご覧頂けたら、「男の子ってこんなこと考えているんだ」みたいな、「メールをすぐ返してあげるだけで世界は救われるかもしれないな」なんて思ってくれたら幸いです(笑)

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  • 松居大悟[Daigo Matsuo]
    映画監督
    1985年11月2日生まれ。福岡県出身。慶応義塾大学在学中に、演劇ユニット"ゴジゲン"を旗揚げ。現在に至るまで、全作品の作・演出・出演を手がけている。09年、NHK「ふたつのスピカ」で、同局としては最年少ドラマ脚本家デビューを果たした。07年から自主制作映画を発表し続け、『ちょうどいい幸せ』(監督・脚本)は沖縄映像祭2010年グランプリを受賞。商業映画としては本作「アフロ田中」がデビュー作となる。

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