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VOICE 来福した旬な著名人にお話を聞いてきました。

  • PEOPLE
  • 2013.10.1 Tue

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vol. 50 桂 かい枝

落語家

INTERVIEW

  • 桂 かい枝[Kaishi Katsura]
    落語家
    偶然見た五代目桂文枝の高座に惚れ込み、それまで全く経験がないにも関わらず弟子入りを決意。稽古を地道に重ねながら初舞台を迎え、舞台直前に師匠から「かい枝」の高座名をもらったという逸話がある。古典落語や創作落語にくわえ、日本独自の笑芸落語の魅力を世界の人たちにも伝えたいと、1997年より英語落語の海外公演を行い、これまでに世界15ヵ国93都市で300回以上もの公演を成功させている。オーストラリア・シドニーのオペラハウスや、アメリカ・国立劇場ケネディ・センターでは落語家初の公演を実施。またアメリカ人による「落語コンテスト」のプロデュースも行う。

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日本の笑いを世界へ

日本独特の風俗やニュアンスをふんだんに取り入れる、語りの芸能「落語」。伝統的な言葉の芸能において、日本語だけではなく、英語でもチャレンジしている果敢な人がいる。その人の名は、桂かい枝さん。彼は日本を代表する文化庁の文化交流使として海外ツアーを行っており、アメリカではキャンピングカーで横断しながら80回もの公演をやり遂げている。先日、大名にあるダイニングバー「STEREO」で行われた、独演会と懇親会で桂かい枝さんにインタビューを敢行。11月、秋の一大イベント「博多天神落語まつり」を控え、さらに注目される桂かい枝さんに、落語の魅力をお話ししていただいた。

博多の人は笑うのが好きですよね。基本、陽気。

今回のような場所で落語を聴けるとは思っていなかったので、本当に楽しかったです。

落語は、どこでも楽しめるもの。そこが良い所のひとつだと思います。座布団一枚置くスペースがあれば、どこでもできますから。僕は会場の広さによって、やり方や演目を変えて楽しんでいます。大きいホールの場合、表情があまり見えないので、話芸というかスピーカーから聞こえてくる言葉や音で物語を想像してもらえるようにやります。今日のような場所では、身振り手振りや表情で見た目にも分かりやすく笑わす事ができるものが良いかなと。それぞれの会場の作りや雰囲気に合ったお話を考える。それが面白い所ですね。落語家によって、いろんな話し方があると思いますが、今日のお話はわりと体を使ってやりましたね。

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福岡にはどれくらいのペースでいらっしゃいますか?また、福岡の印象を教えてください。

毎年、飯塚市にある嘉穂劇場には呼んでいただいてますね。先日は、兄弟子である桂文枝(前名桂三枝)さんの襲名披露公演で出していただきました。次回は去年に続き今年も、三遊亭円楽師匠がやっている「博多天神落語まつり」に出していただきます。博多の人は、都会の人なのに楽しむ事が上手。メディアが沢山あり、街も発展している所なのに、とても素直な人たちが多い。大阪と東京とは少し違うような。笑うのが好きですよね。基本、陽気。

福岡の人は、具体的にどういった反応をするのですか?

公演後、本音をいう。「面白かったわ〜。思ってたより。」とか(笑)。そういうのが、うまいわ〜。大好きですよ、本当に。「博多天神落語まつり」に来る人たちの印象が強いのかもしれないけれど、とても素敵なお客さんばかり。それに博多の人は、大胆な人が多いね。お金の使い方とか、先輩がおごってくれる事が多いですよね。そうそう、博多は日本で一番自己破産する人が多いらしいよ。カードの借金とかもね。ある意味、そこも魅力(笑)。本当に人生を楽しんでいる人たちだという。そこが落語を聴く時の態度にも繋がってくるわけですね〜。やっぱり名古屋は、貯蓄が高いからか、あまり笑わないんですよ。

人生の笑いあり、涙ありの喜怒哀楽全てのお話を表現していきたい。

日本と海外の人とでは、落語の楽しみ方に違いはありますか?

外国の人は、そもそも落語を聴くのがほぼ初めてという人ばかりなので、日本の人とは全く違う反応です。誰でも見た事のない人間に対する興味って、すごいじゃないですか。僕が思っている以上に、外国の人がよく笑ってくれる事があります。日本は、何となく落語ってこういうものだというのがあるので、外国の人の方が新鮮な反応をしてくれますよ。素直に驚いて、見てくれている気がします。

日本語での落語、英語での落語。それぞれの魅力を教えてください。

外国で落語をする場合は、”笑い”に重点を置いてお話を進めますね。落語は、コミックストーリーテリング。面白いお話をするとねという紹介の仕方です。実際、落語はこっけいな話や笑い話があれば、悲しい話や思恋の話など演目はさまざま。今は外国の方々に向けて、英語落語では笑い話をしているけれど、いつかは人情話で泣かせるなどもしてみたいですね。人生の笑いあり、涙ありの喜怒哀楽全てのお話を表現していきたい。落語は、幅広い芸能なのだという事を紹介していきたいと思います。

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英語は好きなんですが、今でも苦労する事がよくあります。

世界に落語を広めていきたいと思ったきっかけは何ですか?

僕は神戸に住んでいるんですが、昔から英語が好きでよく外国の方がいるバーに行ってたんです。そこで偶然出会ったアメリカの人に、自分の仕事を聞かれ自己紹介したら、落語をその場でやってくれないかと言われました。当然予想していなかった事ですし、英語落語の活動もしていなかった時期だったから理解してもらえず。それで、落語をしっかり伝えられる人になりたいなと。その事がとても悔しかったんですね。それから一年間勉強し、98年に初めてアメリカで公演をしました。その公演がとても反応が良かった。英語でも落語をこんな風に面白いと思ってもらえるのだと分かり、英語落語の魅力にハマっていきましたね。

英語落語の難しさを感じる事はありますか?

英語は好きなんですが、今でも苦労する事がよくあります。自分のイメージ通りに物事を伝えるのは難しい。落語は、アドリブ的にさまざまな方向に話が展開するから、こちらが当初考えていた面白い事でも、伝え方によっては理解されない。その土地柄にも左右されますしね。街の様子をお話に入れたり、馴染み深い言葉を使ったりすると分かりやすいのだけれど、英語でやるとなると…。笑ってくれる事もあれば、失敗もある。

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英語落語の活動を続けていく糧となっている事は何ですか?

やっぱりお客さんが笑ってくれる事が何より嬉しい。だからウケないと、どうしようもない。今日も少し不安になりましたよ。一席目の落語は、違うネタが良かったなとか、あの小話はもう少し後でやったほうが良かったかなとか。今回は、古典と新作にくわえて英語もやらないといけないから、全体のバランスをとるのが難しくて。独演会は、一度舞台の袖に入ったり、他の落語家が出てきたりして、場の空気を変える事ができないので単調な状態になりがちです。会場がベターっとした雰囲気だった場合、一時間の公演がしんどく感じる。ゆるゆるっと始まり、その中でメリハリをつけてお客さんを飽きさせず、長時間話をひっぱるのは難しい事です。

落語が、辞書に出てくるようになったら素晴らしい事だと思う。

難しい事ばかりのようですが、それが夢中になる理由のひとつなのかもしれませんね。

そうですね。最近、とても楽しいですよ。落語は、いろいろな種類の演目があり、年を重ねる毎にできるネタが増える。覚えて、試してみる事で芸が広がるのが魅力です。そして、歳を取っても終わりがない仕事。死ぬまで現役でいられる。人間国宝の落語家である、桂米朝師匠は88歳。ある時、桂文枝(前名桂三枝)師匠が、「僕、還暦になってしまいました。」と言ったんですよ。そうすると、米朝師匠が文枝師匠に「君、これからやな。」と。そういう世界だから、ありがたい。会社勤めの人たちが、定年退職する歳でも、自分が今後どう化けるか分からないという可能性を秘めている。とても夢がある仕事ですね。

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これからの展望をお聞かせください。

海外で今以上にしっかりとやっていきたいです。英語の辞書には、歌舞伎、能、狂言などの古典芸能がのっている中で、落語という言葉はまだ載ってないんです。落語が、辞書に出てくるようになったら素晴らしい事だと思う。そうすれば、きっとたくさんの方へ落語の魅力を伝える事ができるから。そのためにいろいろと活動していきたいです。それと自分自身が、噺家としてもっと多くの人に来ていただけるように人気のある噺家になりたいです。

INFORMATION

第七回 三遊亭円楽プロデュース『博多天神落語まつり』
11/2(土)、11/3(日・祝)イムズホール
11/4(月・振休)FFGホール(旧福岡銀行本店大ホール)

東西の人気落語家が集結する、博多の秋の一大イベント。三遊亭円楽プロデュースで話題となってきた本公演。第7回目となる今回は、4会場・全22公演にて行われる。
■ 時間:各会場により異なる。詳細はこちら
■料金:全席指定 5,250円※6歳未満入場不可
■販売:ローソンチケット、 チケットぴあ、イープラス 他
■問い合わせ:092-714-0159

INTERVIEW

  • 桂 かい枝[Kaishi Katsura]
    落語家
    偶然見た五代目桂文枝の高座に惚れ込み、それまで全く経験がないにも関わらず弟子入りを決意。稽古を地道に重ねながら初舞台を迎え、舞台直前に師匠から「かい枝」の高座名をもらったという逸話がある。古典落語や創作落語にくわえ、日本独自の笑芸落語の魅力を世界の人たちにも伝えたいと、1997年より英語落語の海外公演を行い、これまでに世界15ヵ国93都市で300回以上もの公演を成功させている。オーストラリア・シドニーのオペラハウスや、アメリカ・国立劇場ケネディ・センターでは落語家初の公演を実施。またアメリカ人による「落語コンテスト」のプロデュースも行う。

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