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VOICE 来福した旬な著名人にお話を聞いてきました。

  • PEOPLE
  • 2017.6.16 Fri

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vol.79 吉田大八、リリー・フランキー

映画監督、CMディレクター

INTERVIEW

  • 吉田大八
    映画監督、CMディレクター
    1963年鹿児島県出身。映画監督、CMディレクター。CM制作会社でディレクターとして活躍し、様々な広告賞を受賞。映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07年)で、長編映画監督デビュー、カンヌ国際映画祭の批評家週間に招待される。『桐島、部活やめるってよ』(12年)では、第36回日本アカデミー賞最優秀監督賞、最優秀作品賞などを受賞している。
  • リリー・フランキー
    1963年福岡県出身。イラストレーター、ライター、エッセイスト、小説家、絵本作家、デザイナー、ミュージシャン、作詞家、作曲家、構成作家、演出家、ラジオナビゲーター、フォトグラファー、俳優など、驚くほどの多種多才な顔を持つ。俳優としては映画『ぐるりのこと。』(08年)にて、ブルーリボン賞の新人賞を受賞。その後、NHK大河ドラマ『龍馬伝』(10年)、『モテキ』(ドラマ版・10年、劇場版11年)、『凶悪』・『そして父になる』(13年)などに出演する。

TEXT BY

後藤 麻与
編集兼スタイリスト

香蘭ファッションデザイン専門学校卒業後、インポートセレクトショップ・広告デザイン会社のマーチャンダイザーを経て、現在は編集を中心にスタイリングまで行う。ファッションをより身近なものにしたいと願う良いお年ごろ。

19123

人生を楽しくするための斬新なアイデア

平凡な家族が、ふとしたことをきっかけに「宇宙人」として覚醒し「美しい星・地球を救う」使命に目覚めるという三島由紀夫の異色の小説、『美しい星』が映画化された。現在、上映中である本作は、吉田監督が初めて原作を読んだ大学生の頃から映画制作を切望していたものだそうで、約30年もの時を経た今、現代の人々にも新鮮に映るストーリーとして蘇らせた。吉田監督とリリー・フランキーさん、同い歳であり、共に九州出身で背格好までも似ている…何だかコンビのようなおふたりの宣伝活動に少しおじゃまさせてもらい、終始和やかな空気の中インタビューを行なった。

-同い年であるおふたりから見た、原作者である三島由紀夫さんのイメージを教えてください。

吉田:小学校に上がったくらいに、三島さんが自決したことを知ったので…やっぱり“ニュースの人”としての印象がすごく強いですね。あまりにも死に様が強烈でしたよね。ただその随分と後で、山口百恵さんが出ていた映画『潮騒』の原作を書いた人だと知り、それが恋愛映画だったので、何だかつかみどころのない人だなと思いました。大学生になった頃、三島好きな友人がいて、『美しい星』も勧められて読んだんです。読んでみて、こんなに格好いい小説を書く人だったんだ、と驚きました。

リリー:確かに切腹自殺した人という印象がまずあって、後から教科書で文章を書く人だと知った感じですね。さらにその後でもっと色んな三島さんの側面を知っていくというか。いつの間にかマッチョな体になっていて自分の写真集を出していたり、演歌を歌っていたり、小説だけでなく評論も書いていて。もうどうなっているんだ!みたいな。ひとりの人が世の中に与えている情報量としてはマックスですよね。大作家であるし、ポップスターでもあるし。三島由紀夫記念館に行くと、筆の原稿が置いてあるんですが、その字を見るとすごく真面目な感じもします。気の弱そうな文字を書いているんですよ、この字でこれらの小説が書かれているのかと考えると、何だか、色んなことができすぎている気がしますね。

吉田:多分三島さんの時代の小説家は、黙って書斎で小説を書いて、つねにタバコをくゆらしたりお酒を嗜んだりしているような存在だったんでしょうね。そして三島さんにはきっと、そういう古典的な作家のイメージには収まりきらないくらい、やりたいことや表現したいことがいっぱいあったんだと思います。だから写真のモデルもやるし、役者もするし、エッセイも書くし、歌も歌うし、学生たちの前で討論もやるしで。そんな、従来の器に収まりきれないところから、この小説「美しい星」もできたのかなと。当時の三島さんが世の中から期待されているものとは違う、ということをご本人も楽しんで書いたような気がする。三島さんの正直な気持ちがすごく反映されていると思います。

-吉田監督は作品のどういったところに魅力を感じましたか?

吉田:破綻ギリギリで、高い純度を保っているところ。そこに憧れたし、映画を作るというかたちで少しでも近づきたいという一心でした。

-念願の映画化ということで、キャスティングについても悩まれましたか?

吉田:いえ、リリーさんについては、シナリオを書きはじめる前から決めていましたよ。小説を読んだ当時から何度も映画化したいと思っていましたから、主演について考える時間は十分にありました(笑)。『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』を撮り終えた後「美しい星」を絶対にやりたい!と思って、一度制作する話が出たんですが、その時はプロデューサーと誰を主演にするかで意見が食い違い、話し合っているうちに企画自体がなくなっていました…。それから10年後にこうして再び企画が立ち上がって、ふと気がつくと、主人公と僕が同い年になっていました。いままでは当然自分より年上の俳優さんが主人公をやるものだと思っていたのが、そうか同世代の人でいいのかと思って、「そうだリリーさんがいる!」と。ちょうどリリーさんの出ている映画を観て、一緒に何かできないかなと考えていた時期でもあったから。後はリリーさんのスケジュール次第でした。

-お話を受けて、リリーさんはどう思われましたか?

リリー:映画に呼ばれた時、「俺なんかより他の人の方がいいんじゃないの?」とよく思うんですよ。ただこの脚本でこの演出でこの役なら、俺が一番よかったなと。いつもだったら、他の人がやるなら誰かなとか考えたりするんですが、今回はそれがなかった。違う人が監督で違う人が台本を書いていたら他の人がいいと思うんですけどね。

-リリーさんはいつもそんなことをイメージするのですね(笑)。

リリー:そうですね、いつもの枠の中で誰が合っているかをよく考えるんですが…この枠を外れたとしても、今回は一番俺がよかったかな。他の監督だったら違いますよ、その時はジャスティン・ティンバーレイクでもいいくらいかもね(笑)。

吉田:リリーさんにこのシナリオだからと思ってもらえていて、今回は本当にやっていただくべき人に主演をやっていただけたと思っています。今、主人公の重一郎と僕らふたりが同い年であることも、ひとつの巡り合わせのように感じます。

リリー:もしライアン・ゴズリングが俺の役をやっていたらとか考えると、なんか可哀想さが足りないかなと思います。

-本編を拝見しましたが、テレビで得た情報を思わず口ずさんでしまったり、そのポーズをまねしたくなったりする、つい気になってしまうCMのような演出が面白かったです。やはりこういった仕掛けというのは、CM制作とも繋がるような部分があるのでしょうか?

吉田:どうなんでしょうね。確かにCMは「笑い」をひとつの武器にしているところがありますよね。笑えることというのは、すごくシリアスなことと隣り合わせなことが多いと思うんですよ。僕は、わりとこの組み合わせで表現するのが好きなんですよね。ただ真面目なだけ、ただ笑わせているだけだと物足りない気がしてしまうんです。

-それにしても、あの主人公の決めポーズは面白かったですね〜。

吉田:僕と振付けの方とリリーさんと3人で色々考えましたね。

リリー:台本には「ここで火星人のポーズをする」とか詳しく書いているわけではなく…実際現場で試しにやりながら進めていったから、「結構派手にやるもんなんだ〜」と思いました(笑)。

吉田:え、どれくらいのイメージだったんですか?

リリー:もっと精神世界寄りのささやかなやつかなと…。そしたら、体全体を使うものだったから驚きました。ただやっているうちに、これはセリフもポーズも全て中途半端な感じでやると途端に寒い感じになるなと。露骨に笑いを取りに行っている人に見られてしまうかもしれないから、やりきろうと思いました。

-そうですね、あまりの真剣さに思わず笑ってしまいました。

リリー:個人的なイメージとしてはですが、クイズ番組「パネルクイズ アタック25」に出る人たちに近い感じがしています。難しい問題を答えられる人達だから、みなさん頭のいい方たちばかりだと思うんですが、あの方々が自己紹介の時に見せる「人生初の決めポーズ」の瞬間に似ているなと演じていて思いました。回答者が紹介され、強めにガッツポーズをする姿は思い出しただけでも気になりますよね。人生初のガッツポーズのイナタさというか(笑)。もちろん本人は真剣ですが、見ている方は少し笑ってしまうという。

吉田:そんなこと考えていたんですね。今初めて知りました。確かに、何でも難なくやってみせると、人に見せるためにやってるような余裕が見えてしまいますからね。映画の中のリリーさんも、気持ちの方が上回ってしまって、体がついていかない様子がよく出ています。

リリー:結果、俺が最初思ってやっていた精神世界よりのポーズは、娘役の橋本愛ちゃんマタ―でしたね(笑)。

-そのほか、演じていて面白かったなと思うところはありますか?

リリー:撮影自体、毎日面白かったですよ。しんどかったこともありましたが、普段あんまりやらないことが多く新鮮でした。

-今回はお天気キャスターの役でしたね。撮影風景を撮られるということで、リリーさんは2台のカメラに追われているということですから、なんだか違和感がありそうですよね。

リリー:それもそうですし、今日のお天気のことを話しながら重一郎のキャラがぶち壊れていくシーンも、じつはテレビ用のカメラで撮っているんですね。あんなカメラ目線でお芝居することはないから…初めての経験でした。

-吉田監督の演出で個性的なところといえば何ですか?

リリー:的確な演出をする人。クランク・インがラブシーンからだったんですが、バスローブ一枚で、ベッドシーンも初めてだったから照れくささもありながら、割りと普通にベッドシーンをしていたら、そこへ監督が来て「もうちょっと50代のおじさんが若い女の子とやっている感じで、がっついてください」といわれました。あ〜なるほど、的確なこというなと。あと、出すまでしてくださいといわれました(笑)。

吉田:誤解がないようにですが、実際に出してほしいというわけではないですよ!その瞬間も表現してくださいという意味です(笑)。

リリー:そういうシーンは、普通省かれるのではないかなと…ロマン・ポルノでもないですし。でもまあ、ド頭からこのシーンを撮るというのもどうかしていると思いました(笑)。

-演出側として印象的だった部分はありますか?

吉田:僕は、昔からやりたかったことが実現できているという点で、きれいごとでもなんでもなくただただ楽しかったです。もちろん、日々解決しなきゃならない問題は多かったけど、それでも、いつもより撮影自体がすごく楽しかった。

リリー:こちらは結構大変でしたよ。夜中に終わって朝が早いとか、ほとんど眠れない時もありましたし…。また4人家族の設定でしたが、それぞれが均等に個別で撮影しているから、演者はほぼ最終形が分からずにいたと思います。監督は全体を見ることができる側だから、作品として完成していく実感があったんでしょうが…。俺は観た時初めてこうなるんだと感動しました。

-そんなことを少しも感じさせない自然な形で、家族の姿が映し出されていました。

吉田:実際は顔が似ているわけでもない、一緒にいる時間もほとんどない家族ではありましたが、映画を観ていただくと分かるように、本当に自然にまとまっていて、家族だなと感じられるんです。

-この作品を観て、やっぱり家族って大事だなと思ったり、自分のやっていることに使命や責任を得た時、人って強くなるんだと思ったり。様々なことを考えさせられる作品でした。

リリー:直接的ではなく、間接的に大事なものがつまっている作品ですよね。人として大切なことをあらゆる視点から教えてくれる、しかもその伝え方がユーモアにあふれているからまたいいですよね。最近の日本映画にあまりない感じかなと思います。

-最後に、おふたりは九州出身ですが、福岡にはどんなイメージがありますか?

吉田:みなさんおっしゃることかもしれませんが、どうして女性がこんなに綺麗に見えるんだろうと(笑)。

リリー:さっきもロケバスで移動している時にずーっと話していましたよね。博多の女って綺麗だよねって。あと福岡の人は、人懐っこいけどあつかましくないからいいですね。

-そうですか、人との距離感が近い気もしますが、あつかましくないんですね。

リリー:いきなり後ろから肩ガツーンって掴んできたりはしないけれど、それにしてもすごく喋りかけてくるみたいな。

吉田:福岡の人は、根が明るい気がします。これタモリさんがいっていたことなんですが、話していて気持ちがいい人が多いです。

リリー:これもタモリさんがいっていたことなんですが、福岡は、日本に迎賓館が初めてできた場所で、人をもてなす歴史が1000年もあるそうです。福岡の人といて楽しいのは、やっぱもてなしの歴史が他所とは違うから。そういえば、福岡に単身赴任になっている人は、なんとかして東京に帰らなくていいように自ら遅延願い出すとか聞きますよ。家族には「まだまだ福岡でやらないといけないことある」とか理由つけて。

吉田:なんか分かる気がします(笑)。

INFORMATION

映画『美しい星』


予報が当たらないと話題の気象予報士・重一郎は、さほど不満もなく日々適当に過ごしていた。ある日、空飛ぶ円盤と遭遇した彼は、自分は火星人で人類を救う使命があると突然覚醒する。また、息子の一雄は水星人、娘の暁子までもが金星人として目覚め、それぞれの方法で世界を救おうと使命感に燃えるが、妻の伊余子だけは覚醒せず地球人のまま―。



■原作:三島由紀夫『美しい星』(新潮文庫)
■監督:吉田大八
■脚本:吉田大八、甲斐聖太郎
■音楽:渡邊琢磨
■出演:リリー・フランキー、亀梨和也、橋本愛、中嶋朋子 ほか
■公式サイト:http://gaga.ne.jp/hoshi/
公開中
T・ジョイ博多 / TOHOシネマズ天神 / ほか全国ロードショー
©2017「美しい星」製作委員会

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  • 吉田大八
    映画監督、CMディレクター
    1963年鹿児島県出身。映画監督、CMディレクター。CM制作会社でディレクターとして活躍し、様々な広告賞を受賞。映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07年)で、長編映画監督デビュー、カンヌ国際映画祭の批評家週間に招待される。『桐島、部活やめるってよ』(12年)では、第36回日本アカデミー賞最優秀監督賞、最優秀作品賞などを受賞している。
  • リリー・フランキー
    1963年福岡県出身。イラストレーター、ライター、エッセイスト、小説家、絵本作家、デザイナー、ミュージシャン、作詞家、作曲家、構成作家、演出家、ラジオナビゲーター、フォトグラファー、俳優など、驚くほどの多種多才な顔を持つ。俳優としては映画『ぐるりのこと。』(08年)にて、ブルーリボン賞の新人賞を受賞。その後、NHK大河ドラマ『龍馬伝』(10年)、『モテキ』(ドラマ版・10年、劇場版11年)、『凶悪』・『そして父になる』(13年)などに出演する。

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