AFRO FUKUOKA

AFRO BLOG

福岡の今をあれこれ更新

  • CULTURE
  • 2020.6.4 Thu

ENTRY TITLE

PARTY AGAIN!福岡のカルチャーの存続と試み

TEXT BY 徳満 梨紗

TEXT BY

徳満 梨紗
編集ライター

鹿児島出身。美術、料理、DIY。多趣味には24時間では足りません。 猫が寝床をつくるような部屋作りを日々実践中。

25540

福岡の音楽とカルチャーの発信地「Kieth Flack」

福岡・親不孝通りの路地裏に一歩足を踏み入れると、一際目を引く建物が。アヴァンギャルドでありながらレトロさ漂うこの建物の名は「マジックスクエアビル」。その1F2Fにあるクラブ・ライブハウス「Kieth Flack」といえば、福岡のミュージックシーンやホットカルチャーを発信し続け、アーティストが夜な夜な集う刺激的な空間。そんな活気あふれるスペースも新型コロナウイルスの影響でサイレントモードに…いや、全くサイレントモードなんてここには似つかわしくありませんでした。営業ははばかれるものの、こんな状況だからこそ音楽や話題を届けたいと動き続けています。オンライン配信やクラウドファンディングに至るまでの経緯など「Kieth Flack」の取り組みとこれからについてオーナーの疋田さんとマネージャーの田上さんに聞いてみました。



—「Kieth Flack」について


1994年に中洲でスタートし、現在のこのビルに移転しました。異質な建物だから外人さんや県外の方も興味を持ってくれますね。今ではSNS映えするフォトスポットにもなっているみたいです(笑)。1Fはお酒を楽しむバーラウンジ、2Fがメインのフロアになっていて、音楽以外にもライブペイントだったり上映やトークだったり実は多目的に使えるんですよ。毎年10月にはアニバーサリーパーティも開催してます。「Kieth Flack」としては1・2階のフロアなんですけどその時にはビル全体を貸し切って周年祭をしていて、全ジャンルを1日で網羅するスペシャルプログラムは目玉イベントですね。ただ今年は開催できるのかまだ見通せないところですけど…。




—新型コロナウイルスの感染が拡大してから


3月末に福岡県から自粛要請が出た夜の翌日から全てをキャンセルし完全休業になりました。中にはチケットが完売しているイベントもありましたし、お客さんはもちろん、気持ちを込めて準備してくれていた主催者と出演アーティストの皆さん共々ショックが大きかったです。さらにゴールデンウィークまで続くと大きなイベントも全て中止になるのでダメージ大でしたね。当たり前ですけど海外のアーティストは来日すらできないので全てキャンセルです。こういった状況からいつ元通りになるか目処が立たないのも苦しいところですね。



—クラウドファンディグについて



正直クラウドファンディングには抵抗がありましたが、先は長く厳しい戦いになると見越し、経営者として断腸の思いで決断しました。東京とかの都心部ではすでにこういった動きが始まっていましたね。4月に入ってすぐに取りかかり、スタッフと話し合いながら1週間で集中して準備を行いました。ありがたいことに開始から1日で目標金額を達成でき、最終的には1000人を超える方々にご支援いただきました。1フロア貸切の【スペシャルレンタル】も限定数即終了でしたね。今回特別に制作した「PARTY AGAIN」のTシャツもToyamegさんがイラストを短期間で描き下ろしてくれたりと本当にたくさんの方々のご協力のおかげです。スタッフとして改めて26年の歴史を感じることができました。また、個別でご支援いただいたり、タワーレコードさんやアーティストさまが主体となって様々なプロジェクトを立ち上げて応援もいただいています。




—オンラインライブ配信に至るまで


最初のライブ配信は、沖縄を拠点にして日本全国16カ所のクラブを40時間リレーするオンラインフェス「VirtuaRAW」に参加しました。ただ、その時はカメラや配信機材のノウハウもなかったのですでに揃えていた親しい店舗に協力してもらいました。開催発表から本番まで期間もなかったのですが、各地で告知をがんばって当日まで部活さながらに駆け抜けましたね(笑)。結果、約2500人が視聴してくれて、反響をもらえたことは大きかったです。これまでこういうイベントは東京が拠点というのが当たり前だったのがオンラインとなると沖縄が主導で開催できる。どこからでも発信できるのはいいことだなと感じましたね。



—7日間連続配信に挑戦


photo by Ryoko

この経験を活かして、まだ試みていなかった「Kieth Flack」の企画として【Kieth Flack “ONLINE” Session】を開催しました。7日間通し券として販売し、参加するお客さんには普段行かないようなジャンルのPARTYも楽しんでもらえるようになればと考えました。基本生配信だったのでオンタイムでの視聴をおすすめしていましたが、みんながSTAY HOMEという状況でもなくなってきたのでアーカイブを観れるようにしたり、アーティストの応援につながる投げ銭もできるシステムを利用して、より参加型で楽しめるようにしました。新しい挑戦ができてよかったと同時に、正直に話すと収益化するのは厳しい側面もありますね。この休業期間はメンテナンスだったり、これまでやっていなかったことに目を向けたりする勉強期間としてスキルアップにつなげるよう心がけました。


photo by Ryoko


—福岡市が支えるカルチャーと支援金


こういう状況なので何か策はないかと高島市長のブログをチェックしていたところ、配信機材を対象とした支援金の存在を知りました。同業種の方や、行政の方からも話を聞きながら申請させてもらいました。全国的にも珍しく、上限50万円というのはかなり手厚いのではないでしょうか。費用として全てを賄えるわけではないですが、今は収入もなく、こんな機会でなければ買い揃えることも、使い方を学ぶこともできなかったので本当にありがたいです!ライブハウスに関わらず劇場などの文化施設は窮地に立っているので、打開策を考えていかなくてはなりませんね。



◼︎文化・エンターテインメント施設への事業継続支援金について
市内の文化・エンターテインメント施設(ライブハウス,劇場など)に対し、無観客での映像配信設備等にかかる経費として、50万円を上限(対象経費の5分の4)に支援する。

▽詳細は福岡市ホームページへ
https://www.city.fukuoka.lg.jp/keizai/contents/business/coce.html



—これからの「Kieth Flack」


6月1日から営業の許可は出ているもののこれまで通りというのは難しそうですね。徐々にという形ですが、ガイドラインに沿って検温、消毒、名前の記入だったり対策は徹底して営業は再開します。通常2Fは150人ほどの収容人数なのですが50%以下に制限というのを考えて、1Fのみのバー営業から様子を見て行こうかなと思います。例えば、今後すぐにお客さんをキャパいっぱいに収容することが厳しいと思うので現場の動員は制限しつつ配信も同時に行って、音楽だけでなく熱気まで伝えることができたらいいのかもしれません。一番は何も気にせず「PARTY AGAIN」できる日が早く訪れることを願っています!






話を伺う中で人との繋がり、縁を強く感じました。そして「Kieth Flack」を盛り上げるアーティストや同業種と支え合いながら踏ん張る光景に、音楽をはじめとしたカルチャーの持つパワーも伝わりました。もちろん躊躇しない姿勢と明確な行動力がこの短期間で大きな変化をもたらしているのは確かです。そして福岡市のカルチャーを守っていく支援こそが多くのアーティストと文化施設を支えています。支援金はこの窮地を打開する方法を模索するきっかけとなり、今後の文化発展に一石を投じているのではないかと思います。まだまだコロナショックが続く中、私たちの生活に大きな局面を強いられていますが、今はただ帰れる場所を守るために行動あるのみ!何が正解かはわかりませんが、わからなくなったら音楽を爆音で聴いてハイになったらいいじゃない!なんだか楽しくなれば楽しい未来が見えてくるはず。そのために「Kieth Flack」は今日も最高にクールな音楽を届けるのです!



photo by Ryoko



INFORMATION

Kieth Flack
場所
福岡県福岡市中央区舞鶴1-8-28 マジックスクエアビル 1F.2F
TEL
092-762-7733
WEB
https://kiethflack.net/

TEXT BY

徳満 梨紗
編集ライター

鹿児島出身。美術、料理、DIY。多趣味には24時間では足りません。 猫が寝床をつくるような部屋作りを日々実践中。

OTHER BLOG

その他の記事