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CULTURE INFO.
これを記念して、本年の展覧会では、出光コレクションから精選した逸品の数々を紹介します。
第二弾となる本展では、“奇想の画家”として知られる伊藤若冲(1716-1800)が描いた「鳥獣花木図屏風」を筆頭に、<珍しい> <瑞い> <怪しい>動物たちの集いをお楽しみいただきます。
身近で愛らしい鳥獣や、奇抜な姿をした空想上の生き物など、時代を問わず美術作品の中にはたくさんの動物が溢れています。
そういった文化の深淵に息づく動物たちは、作品の主題(モチーフ)として、あるいは豊麗な装飾文様として登場しますが、それらは何気なく描かれたのではありません。
主に中国文化を源としながら、日本を経て育まれた <動物たち>は、平和や富貴、権威、魔除けなど、人々の想いを具象化させた象徴として表現されているのです。
さらには、そこに込められた象徴的な意味に加えて、主題の背景や場面、色彩、造形など、作品から知ることのできる情報と合わせて考えることで、制作の意図や、作品を楽しみ享受した人々の想いに触れることもできます。
「何が描かれているのか」そして「なぜ描いたのか」といった視点から読み解いたとき、美術の世界に棲む動物たちの、その真意について深く知ることができるでしょう。
人々の想いや願いが紡がれ形成された、珍獣、瑞獣、怪獣たちの姿を、出光コレクションの絵画・陶磁器の名品から探ります。
鳥獣花木図屏風
六曲一双
伊藤若冲(1716-1800)日本 江戸時代(18世紀)
紙本着色 各168.7×374.0cm
出光美術館所蔵
およそ1センチメートル四方の方眼が、表装裂の部分を含めた屏風全体をびっしりと覆っている。
「升目描き」と呼ばれるこの技法は、18世紀の京都の画家・伊藤若冲が操ったものである。
若冲は、西陣織の製作のためにつくられた「正絵」(織物図案)に触発され、あるいはまさに織物を生み出すために、この型破りな技法を用いたらしい。
本作の方眼は、片方の画面だけで約42,800個。さらに個々の方眼の内側には色とりどりの正方形が几帳面に描き込まれ、しかもそのすべてがフリーハンドという驚きの仕業である。
まさしく気の遠くなるような所為の果てにあらわれたのは、あらゆる鳥獣が生息地の隔たりを越え、虚実の境目さえ飛び越えて群れ集い、生命のよろこびを分かち合う、幸福感に満ちた楽園世界である。
第1章 聖なる動物たち
古来、人間は宇宙の神秘や不可思議な自然現象に畏怖の念を抱きつつ、これを理解しようと努めてきました。動物あるいは空想上の生き物は、その世界観を示すために、または事象を合理的に理解するための<イメージ>として用いられました。
儀礼や権威を示す種々の道具には、その様子が色濃く反映されています。
また神仏を表した作品においても古くから動物が登場しており、ひとつの「決まり事」としても機能していました。
ここでは聖なる動物たちの「はじまり」の姿に注目します。
第2章 楽園・怪異に暮らす獣
本章では江戸時代に描かれた絵画作品を中心に、さまざまな動物たちを紹介します。
まさに楽園のような世界が展開していますが、いずれの作品も親密さに同居して、どこか異質さを感じさせます。
現実のようでどこか幻想的な空間は、一体何に起因するのでしょう。
制作の背景や意図を踏まえて、“現実を超えた世界”に暮らす動物たちの謎を紐解きます。
第3章 やきものを彩る象徴
うつわを彩る装飾文様には数々の動物や空想上の生き物が登場します。
その多くは祝意をあらわす「吉祥図案」であり、生き物そのものに富貴や多産といった幸せなメッセージが込められています。
また吉祥文のなかでも古くから権威を示す象徴として扱われ、中国美術に頻繁に登場するのが龍です。
龍は時代を経て皇帝のシンボルとなり、明時代においては、みだりに使用することを禁止する法令も出されました。
その後は形式的に統一された龍の図像が見られる一方、龍のようで龍ではない、さまざまな種類の獣も登場します。
ここでは明清時代の景徳鎮窯を中心に、日本・中国のやきものの中に表された一風変わった動物たちを紹介します。
第4章 古代のうつわに潜む姿
中国の商(殷)・周王朝では、青銅器が宗教の儀式や王権の象徴として極めて重要な役割を果たしていました。
それは祖先崇拝や当時の思想に根ざした精神文化の具現であり、単なる道具を超えた、歴史を物語る造形美といえるでしょう。
そのような青銅器には、全体に幾何学文様が埋め尽くされています。そして、その中には神獣や怪獣が潜んでいるのです。
最終章では、古代の人々が想像した獣の姿に迫ります。
列品解説 : 6月8日(日)、6月22日(日)、7月13日(日)
※いずれも午前11時、午後2時より
※事前の申し込みは不要、入館料のみ
※都合により会期等を変更する場合があります。最新情報は当館ウェブサイトでご確認ください。
※詳細に関しては運営元に直接お問い合わせください
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