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VOICE 来福した旬な著名人にお話を聞いてきました。

  • PEOPLE
  • 2010.10.1 Fri

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vol.21 森本千絵

コミュニケーションディレクター、 アートディレクター。

INTERVIEW

  • 森本千絵[morimoto chie]
    コミュニケーションディレクター、 アートディレクター。
    1976年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、1999年博報堂入社。2006年に史上最年少で東京ADC会員となる。2007年に独立し、株式会社goen゜(ゴエン)を設立。goen゜とは、「出逢いを発明する。夢をカタチにし、人をつなげていく。」集団。

TEXT BY

STAFF
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ほとばしる本能に魅せられる。

新しい発想と仕掛けで、いつも「見せる」ことの楽しさを教えてくれる、アートディレクターの森本千絵さん。人肌を感じるトーンをもつ彼女に、子供のときに抱いていた夢や人とのつきあいかた、育ってきた環境などのお話を伺い、今の感性ができるまでのルーツをたどってみた。

一生懸命に生きることと、好奇心を失わないようにしています。

森本さんの最近のお仕事を教えてください。

東京都の二子玉川にある「はじまり はじまりえんniko」という保育園やNHKの連続テレビ小説「てっぱん」のオープニングタイトル。そして来年の1月からスタートする大河ドラマ「江〜姫たちの戦国」のアートディレクション。SUNTRY「BOSS SILKY BLACK」のCM演出。あとは…、Mr.Childrenさんやゆずさん、大塚愛ちゃんなどのPVやアートワーク、相変わらず、いろいろなミュージシャンのアートワークをやっていますね。そして福岡では、「IMS Christmas 2010」。

現在進行しているお仕事はどのくらいの数ありますか?

そうですね。20件くらいやっています。

仕事で大切にしていることはありますか?

一生懸命に生きることと、好奇心を失わないようにしています。わたしは、多分子どもに負けないくらい好奇心があると思います(笑)。そして、自分には嘘をつかず、思った通りに行動しますね。仕事中は、自分のペースに合った呼吸を調えているので、その場の流れに任せます。

人の心は半分からっぽのようで、きっと誰かと繋がっていないとやっていけなくなるんじゃないかなと思います。

今の感性をつくったといえるようなものやことがあれば教えてください。

わたしは、育ちだと思います。親や触れあった友達、恩師からの影響はあるにしても、一つの出来事がきっかけで、人格が変わるということはないと思います。自分をつくるのは生きかたであって、その流れに沿って真っすぐ向かっていたものが、突然折れたり、急に戻ったりすることは、あまりないと思います。だからこそ、毎日起こることのひとつひとつが大切なんだと思います。

森本さんのアートワークからは、温かみを感じます。

そうですか?わたしは、意外と冷めているところもありますよ。誰でも孤独感はあるというか…人の心は半分からっぽのようで、きっと誰かと繋がっていないとやっていけなくなるんじゃないかなと思います。そんな人の失った半分が何かで埋まるように、楽しめる企画にしています。それと、嘘つきで偽善的なハッピーやエモーショナルは嫌いです。わたしは、本当にハッピーな状況のなかで自然に企画が出るのがいいと思います。わたしのアートワークについて、「幸せそう」とか「可愛い」といわれることもありますが、そういう風に見せようとしているわけではないです。仕事で出会う人たちと摩擦しながら、本当に思ったことを表現しています。そうして出来たものが、誰かの人生にきっかけを与えられたら嬉しいです。

子供のころの夢はなんでしたか?

幼稚園の時は幼稚園の先生。小学校の時は小学校の先生。中学校の時は中学校の先生(笑)。まだ世の中を知らないなかで、子どもなりに与えられた社会の一番えらい人を選んでいました。物事自体をつくっている人に憧れがありました。

何かを伝えることに興味があったんですね。

先生と一緒にお遊戯をしたり、絵本を読んでもらったりして、育ててもらったんですよね。子供からみた大人のイメージは、先生だけでした。だから、大人になったらああいう人になるんだと信じていました。

はじめからイメージしていた通りの赤ちゃんを産むなんて難しいです。

広告クライアントとイメージを共有するコツなどはありますか?

特にないです。いつも丸裸の状態で接しています。一から一緒につくっているので、相手との会話に反応しているだけです。受注発注的な仕事の流れは少ないですね。いつも出来たときにはじめて、このクライアントさんとだとこんな風になるんだなと、意外に客観視しています。例えると、出産に近いですね。はじめからイメージしていた通りの赤ちゃんを産むなんて難しいです。計画的にいくはずがないんです。何度も会って話したり、メールでやりとりしたりして、出来上がるものです。クライアントからの要望で一番困るのは、「あの夫婦の子どもが可愛いから、同じ子どもを産んでよ」といわれること。それは無理です。

Mr.Childrenをはじめ、ミュージシャンとのお仕事も多いですね。

そうですね。まずは、一緒に話したり、その音楽を聴かしてもらったりします。そうすると、企画がふってわいてきてかたちになります。あとは、その時の趣味や読んだ本、着たい服や好きな人など…プライベートから受けたものがいかされます。いつも自分の意志はしっかりと持ちつつ、与えられたことに応えていきたいですね。そうやって誰かとセッションして生まれたものは、ずっと育てていきたいと思います。

イムズオリジナルのクリマスを創造することができました。

福岡の街や人に対するイメージはありますか?

自分の意見をしっかり持っていますよね。自分らしいライフスタイルも。誰かに流されているような人がいないです。わたしの周りにいる人のイメージにはなりますが、意外と東京の人よりも芯があるような気がします。

「IMS Christmas 2010」をすることになった経緯。

わたし、クリスマスが大好きなんです。昔、フィンランドのエストニアにあるサンタクロース村に行った時、サンタさんに手紙を書いておくる郵便局みたいな所が存在して、とても感動しました。それもあって今回は、IMS Christmas 2010のコーディネーターである田部さんから、「森本さんだったら、クリスマスイベントを喜んでやってくれるんじゃないかな」とお話をいただきました。

コインロッカーを使ったプレゼント交換には驚きました。

この仕組みはずっとやりたかったことです。最初は、全国の駅にあるコインロッカーとデパートのロッカーなどを使って、全国一斉プレゼント交換会をしたかったんです。県外の人がプレゼントをもらいに旅にいくのも面白いなと思いました。ただ、安全性の問題や鍵のやりとりなど、窓口となる人がいないから成立しないと思っていました。それが今回出来るようになり、新しいクリスマスの過ごしかたを提案できました。イムズさんらしいクリスマスのセレモニーが誕生しました。またインショップからは、プレゼント提案として、1000円〜3000円の打ち出し商品が販売され、お客様は思わず買っていたようです。イムズオリジナルのクリマスを創造することができました。

本物のコインロッカーを使っているので、リアリティがありました。

そうそう。超露骨なコインロッカーが理想でした。普段見過ごしていたようなコインロッカーが、オブジェとして、プロダクトとして、主役になっているシーンは素敵ですよね。

みんなの想いは、言霊みたいになり空間に溢れていました。

プロジェクトには素敵な方々が関わっているようですね。

切り絵でできたツリーは、大塚いちおさんにご協力いただきました。人と人との間に、鍵とプレゼントボックスがあるんですよ。人が必ず何かを持っていて、繋がっています。そのコンセプトに、博報堂のコピーライター吉岡虎太郎さんから、「つながる つながる クリスマス」という言葉をいただきました。そして、キーヴィジュアルや展開案が見えてきました。今回は仕組みの方が先行し、後からアートワークがついてきました。

プレゼントにはメッセージカードも添えてありましたね。手紙に対する想いなどがあればお聞かせください。

相手に届けたい気持ちが強ければ強いほど、手紙にこめたくなります。それは、サラッと送れないくらい、大切なものなんです。どのように想いを伝えるかをしばらく考えたいというか…。手紙を読み返したり、空気に触れさせたりしたいんです。メールのように、文字を液晶で確認したら終わりではなく、言葉をかたちにしたいと思います。携帯のメールはすぐに消せるし、受信BOXが一杯になればなくなります。今は重力のかかるものに接する機会が少ないから、物事に反応する力が極端に足りない人もいます。色々なものに触れて感じた思いの丈を調整したり、セーブしたりしてきた人の方が、きっと大きな悩みにぶつかった時の対処法を知っているはずです。

読者にメッセージをください。

面白いと思うんですよ。コインロッカーの鍵を開けると、知らない人からのプレゼントがあるというのは。そのライブ感はたまらないと思います。他人が、自分の人生に突然飛び込んでくるんですよ。今年は、顔も知らないあの人から、マグカップを受け取りました。それは、すごく嬉しいと思う反面、不安感もあると思います。その後考えることは、「贈り主はどんな人だろう?」とか、「今日じゃなかったら何が当たっていたんだろう?」、「もし鍵を開けるのが違う所だったら?」とか…。ワクワクしたり、ドキドキしたりして、贈る側にも受け取る側にも、例えようのない魂みたいなものがポカポカ、ポカポカ宿るんです。今回、みんなの想いは、言霊みたいになり空間に溢れていました。来年のクリスマスも、そんな人の想いが、ツリーに飾られるといいなと思います。

INTERVIEW

  • 森本千絵[morimoto chie]
    コミュニケーションディレクター、 アートディレクター。
    1976年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、1999年博報堂入社。2006年に史上最年少で東京ADC会員となる。2007年に独立し、株式会社goen゜(ゴエン)を設立。goen゜とは、「出逢いを発明する。夢をカタチにし、人をつなげていく。」集団。

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