AFRO FUKUOKA

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VOICE 来福した旬な著名人にお話を聞いてきました。

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  • 2012.7.15 Sun

VOICE TITLE

vol.35 世武裕子

ミュージシャン・ピアニスト

INTERVIEW

  • 世武裕子[Sebu Hiroko]
    ミュージシャン・ピアニスト
    滋賀県生まれ。 02年、音楽を学ぶためにフランスへ渡る。パリ・エコールノルマル音楽院映画音楽作曲科Patrice Mestral氏に師事)へ入学。在学中、96年公開アカデミー賞受賞作品「イングリッシュ・ペイシェント」のスコアを手掛けたことで有名な作曲家ガブリエル・ヤレドと、ジャン=リュック・ゴダール監督「気狂いピエロ」を手掛けた作曲家アントワーヌ・ドュアメルと知り合い、その作曲能力に賞賛を得る。 05年同校卒業。

    帰国後、ピアノと弦楽で構成されたインストアルバム「おうちはどこ?」にてデビュー。その後、くるり8thアルバム「魂のゆくえ」のレコーディングおよび全国ツアーに、鍵盤/コーラスとして帯同し、後に世武裕子名義で、くるりのトリビュートアルバム「くるり鶏びゅ~と」にもに参加した。

    フランス語/日本語で作詞した2ndアルバム「リリー」のリリースを経て、FUJI ROCK FESTIVAL ’10で初披露した楽曲を含むiTunes限定シングル「ハローハロー」を発表。

    建築物の様に音を構築する『2011年型 Architectural Pop』を見据えた創作活動を本格的に開始すると同時に、本人が出演/音楽を担当し話題を呼んだTVCF「Googleで、もっと。クロームでストリートライブ」や、現在絶賛放映中のKAT-TUN 亀梨和也出演TVCF「Panasonic Beauty ラムダッシュ"やさしい手"篇」の音楽を担当するなど、映像音楽作家としての活動も活発に行っている。
    最新アルバムは6/6に発売された『アデュー世界戦争」。

TEXT BY

STAFF
AFRO FUKUOKA

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大きなスクリーンをバックに、金髪の女性が楽しそうにピアノの鍵盤を弾く。スクリーンには、様々な楽器と戯れる楽しそうな彼女の姿が次々と映され、それぞれの音色が一つの音楽を形成していく---。
誰もが目にしたことのあるあのCM、GoogleChromeのCMの中でいきいきと音楽と戯れ、音楽を表現する彼女の名前は世武裕子さん。幼少からピアノばかりの毎日を過ごし、フランスへ留学。フランスでの名誉ある評価と共に帰国した後は、くるりのツアーやトリビュートへの参加などでぐいぐい日本での活動の場も広げてこられた世武裕子さんが、この夏「AFROCK FESTIVAL '12」の出演で遂に福岡初ライブが決定!
福岡での初ライブとなる世武さんに、一足早く彼女の音楽への、そして彼女が想いを強く持つ映画音楽の世界のことを伺ってきた。

まずはAFROCK FESTIVAL ’12へのご出演、ありがとうございます!幹宗さん(The Cigavettes:山本幹宗)が世武さんをつないでくれて。The Cigavettesさんとはもう長いおつきあいなんですか?

世武裕子(以下、S):シガヴェッツはなんでつながったんだろう。私あんまりそういうの覚えてるタイプじゃなくて(笑)お酒も飲まないし、飲み会とかそういうのも私あんまり行かないんですよね。まぁそれはともかく、シガヴェッツとの出会いはシガヴェッツに聞いてもらうとして(笑)、でもシガヴェッツと知り合えたおかげで福岡に2回も来れるような縁ができて感謝してますね。

福岡に2回も来られてるんですね。

S:そうなんですよ、彼らのレコーディングに呼んでくれて。1枚目と2枚目の両方にちょろっと参加させてもらってるんです。幹宗くん(The Cigavettes)はロックなピアノをかっこよく弾く人が絶対いいやろうと思ってたんですけど、彼かわってるから、なぜか私に参加依頼をしてくれたみたいで(笑)ピアノやってる時にも何度か来てますし、ほんといいところですよね福岡。福岡推しですよ(笑)

縁ってありがたいですねー。おかげでAFROCKにも出てもらえるし!あ、ちなみにGoogleChromeのCMはどんな経緯で出演されたんですか?

S:あれは偶然iTunesで発見されて、オーディション受けることになって、トントンと進んでいつの間にか出てたみたいな感じなんですよ。

CMの中ではいろんな楽器をやられててすごいなぁと思いました。もともと楽器はいろいろ触れるんですか?

S:いやいや、全然弾けなくて。楽曲のイメージはつくってたんですけど、その音を出すためにギターはおさえる場所とか聞いたりして(笑)ほんとはもっとかっこよく弾ければよかったんですけど、難しくて。それ以外の楽器もほとんどそんな感じです。

あれはどこで撮られたんですか?ライブ?ゲリラ的に撮影されたようにも見えますね

S:たぶん神奈川かな。ゲリラではなくて、一般の人もいましたけど、ほとんどがしっかりと徹底した演出があって、きっちり作ってるんですよ。すごいおしゃれな感じですよね。あれはCM監督の演出力がすごいんですよ。

楽曲のイメージはかなり細かく話せます。登場人物もいるし、どんな服を着ててっていうのも全部言える。

世武さんの楽曲は確かにロックはもちろんそうだけど、ポップでもないし、なんていうか音楽っていうか、楽曲ていうか、「作品」って感じですよね。クラシカルでもあるし。なんだろう、ミュージシャンていうかアーティストみたいな。

S:あぁ、それは嬉しいですね。私、なんだか恥ずかしくてミュージシャンとか自分で言えないんですよ。音楽家っていうのもあるかなと思うけど、音楽家っていうのも「じぶんなんぼほどなん」みたいなところがあるじゃないですか(笑)かっこつけてる感じでるし。

そうですよね、作品力が強くて、アーティストって感じがありますよね。今度のアルバムはインストも多いし。ていうかほとんど歌われてないですよね。

S:そうですねー、正直歌は「たいしてうまくもないのになんで私歌ってるんだろ?」みたいのがあるんですよ。

でもすごいいい声されてるじゃないですかー!独特な雰囲気もあって。

S:声はですねー、たまに褒めてくださる方もいるんですけど、たぶん声の問題じゃなくて歌が下手なんだと思います。

いやいやいやいや!!

S:いやいや(笑)たぶん音程の問題とかいろいろあるんですけど、なんていうんだろう、テクニカルな問題があって。わたしって結構音楽に向き合うときは完璧主義なところがあって、だから楽器もそうだけど、それぞれのアーティスト全員がすごくうまくないと嫌なんですよ。だから自分も同じようにきちんとできていないと嫌なんですよ。

プロデューサーみたいですね。

S:そうかもしれないですけど、そうでもないかもしれないというか。まぁでも曲を作る身としては、イメージしている楽曲の世界というかクオリティをちゃんと形にしたいと思うんですよ。要はあれですけど、ピアノもそうですけど、作曲家としての自分がプレイヤーとしての自分に満足できないのであれば歌手としてのわたしを使わないという感じですね。

自分の歌には満足されていないってことですか?

S:そうですね、目標というか、イメージしているところには達していないですね。だからどっちかというと、「あの人に歌ってもらいたい」「この人に~」みたいなことが多くて、でもなんせこの世の中、他人に頼むとお金もかかってしまいますしね(笑)

じゃあ、そんな世武さんが理想とするボーカリストって例えば誰ですか?

S:うーん、曲にもよりますけどねー。難しいなぁ。わたしあんまり曲聴かへんからなぁ(笑)たまにjonsiとかも聴くしいいなぁとは思うけど、とはいえいっつもjonsiっていうのも違うし、あ、そうだ、すごいなって思ったのは手嶌葵さん!あの人すごい!どんだけきれいなんと思って!手嶌さんがバグダットカフェのテーマみたいなの歌ってた時があって、めっちゃくちゃすごかった!どんな声でどんな歌唱力よ!って。もうあれくらい歌えたらそりゃあ歌うべきやし、人に届けるべきだと思うんですけど、そういうのはそういうことの得意な人に任せて、自分は自分の得意なことをやるほうがいいんじゃないかと思ってます。

じゃあ世武さんの得意なことは作曲のほうってことですか?

S:ピアノもかな。いわゆるピアニストのアプローチとはまた違うと思いますし、 ピアノが決してうまいわけじゃないですけど、ただ表現としてピアノを使って、何かを生み出すというところに関しては得意なんじゃないかなって思いますね。まだやれる余地はあるんじゃないかと(笑)

結果として今回のアルバムがインスト主体で構成されているのって、作品として必要な要素に歌がなかったっていうことなんですかね?

S:それもあるでしょうけどね。ただ、ボーカルがある=歌詞があるってことじゃないですか。正直、わたしそんなに歌詞で表現するってことがあんまり得意じゃないのもあるんですよ。表現したいことっていうか、言葉で言いたいことがあれば日々twitterで書いてるから(笑)だからあえて作品で出すこともないわみたいな(笑)歌詞って難しいじゃないですか。恋愛の歌詞もあんまり好きじゃないし。失恋のこととか歌詞にされても、「全く知らん人の失恋のことはイマイチ分からんなぁ」みたいななるし(笑)私個人としてはですけど、そういうのことこそ、一対一の時に言ってもらいたくて、別に歌詞にして言われてもみたいに思うんですよ。だから自分もあんまりそういうのに興味がないんですよ。それで誰か他人と何かを分かち合いたいという気もないかも(笑)

でも詩的なイメージが強くあるように感じました。タイトルとかも結構変わってる感じがしましたし。

S:そう、イメージはすごいあるんですよ!私が曲を作る時は、それぞれその曲に対して、シナリオというか情景の全てを完全にイメージしてますね。だから、「この曲のイメージを話してください。」って言われたら、かなり細かく話せますね。登場人物もいるし、どんな服を着ててっていうのも全部言える。

最新アルバムのタイトルも「アデュー世界戦争」。かなりいかついイメージを感じます。これはどんな意味なんですか?

S:アデューっていうのは「さよなら」っていう意味なんですよ。バイバイ!みたいな軽い感じもあるし、さよなら!っていう情緒的な部分もあって、だからいわゆるそのまま世界で起きている数々の戦争はもちろん、小さなもめ事とか、些細なけんかとか、いじめとか、そんなことまでふくめてもうさよなら!みたいな感じです。もうええやん!みたいな(笑)日本社会って細かいこと言うでしょ?だからなんだかそういうのもういいやん!って。でもアデューの意味がわからなかったら結構厳ついですよね。

ロック的なというか、攻撃的なイメージを勝手に思ってました。

S:ほんとうは「さらば世界戦争」にしようとも思ったんですけど、寺山修司みたいになるのも違うなって思ってやめたんですよ。それは違うみたいな。私自身は結構テキトーだしネアカなんで。なんかね、作品を聴かれると繊細な人って思われるみたいなんですけど、全く逆で。ふつうのというか、んー、テキトウポジティブ(笑)?

普段は結構ストイックな方なのかなって思ってました。

S:そう言われるんですけど、全然そんなんじゃないですね。確かに小さな頃は、遊ぶ時間を削ってピアノの練習ばっかりしてたから、自分は絶対将来プロになるんやと思ってましたし、そう意味ではストイックやったと思うんですけど、今となっては家にCDプレイヤーもないですから(笑)普段全然音楽聴かないですもんね。映画は好きでよくみるんですけどね。

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「日本人は規則正しくて真面目な民族やのにお前はなんやねん」みたいに言われました(笑)

作品のイメージの含まらせ方って、世武さんってミュージシャンというより、映画監督みたいですよね。

S:私映画監督になりたかったんですよ。でもカリスマ性が足りひんからやめた(笑)映画監督って、総合アーティストっていうか、いろんなことがわからないとダメじゃないですか。カリスマ性ももちろんそうなんですけど、特に私に一番足りないのって、立体でものを感じるっていうか見ることが苦手なんですよ。すごい平面な人間なんで。だからUFOキャッチャーで全然とれないんですよ(笑)映画監督っていうのはUFOキャッチャーでちゃんととれないとダメなんですよ(笑)

たしかに映画監督って、衣装から音楽からなにからなにまでディレクションする能力が求められますよね。でも、向いていないとはおっしゃるけど、僕からしたらやっぱり世武さんは映画監督側の方な気がしますよ。音楽だけじゃなくて、イメージされてるところが広い気がします。

S:そうですねー、音楽よりも映画のほうが好きだったりしますからね。

もともとフランスに留学された時も、映画音楽志望で行かれたんですか?

S:そうです。でもまぁそれは後付けで、まぁ正直なところ海外に行きたかっただけなんですけど(笑)

とはいえフランスではそうそうたる方々からとても高い評価をされることになって、すごいですね。

S:日本と違って、エージェントと話してそこではじかれてっていうのがないので、直接本人と話せる環境があるので、それはとてもよかったですね。

特に、「気狂いピエロ」を手掛けた作曲家アントワーヌ・デュアメルさんからはとても評価されたようですね!映画音楽で世界中から多大な賞賛をされている方から評価されるってどうなんですか?

S:デュアメルさんが書いた曲がもともとすごい好きだったんですけど、顔は全然わからないし、はじめて見たときは「あのおじちゃんめっちゃ髭長い」とかって言ってただけだったんですよ。 他の生徒さんとかはみんな知ってたみたいなんですけど。ただデュアメルさんに直接指導をされたってことはなくて、最後の試験の時に審査委員で来られてて、私の作品をとても褒めてくださって「君はすごい」みたいに言ってもらえて。実は前年の試験の時に納得がいかない評価をされたことがあってて、試験に落ちちゃってたんですよ。 あまりに納得いかなくて学長に文句言いにいったりしたこともあったんですけど、デュアメルさんが「なんでこの子が前年の試験で落ちているんだ?」と言ってくれて。出来不出来はあったとしても、そんなレベルじゃないと。 審査委員って通常は全員音楽家の人なんですね、でも映画音楽って、映画をわかっていないといけないはずなのに、 映画を全くわかってないような人が審査しちゃうんですよ。課題の映画もひっどい映画だったんですけどね(笑)ありえへん映画だったこともあって、こっちも遊んでやろって思って結構トリッキーなことやってみたんですけど、「意味がわかりません。」みたいな感じであっさり落とされたから納得いかんくて。学長に猛烈に文句言いに行ったら、「日本人は規則正しくて真面目な民族やのにお前はなんやねん」みたいに言われましたよ(笑)まぁそんなことがあってのデュアメルさんの言葉だったので、「なんていい人なんやろ!」って思って、帰りの電車で友達に「あの髭のおっさんめっちゃいい人やったわ!」って言ったら、デュアメルさんだったということをはじめてその時教えてもらって、「せやったらもっと話し聞いとくべきやったわ!」ってなりましたね(笑)

そんな順調なフランスでの音楽生活がありながら、何故日本に帰ってこようと思ったんですか?

いやー、ほんとは帰りたくなかったですよ。ただまぁなんか、音楽にちょっと飽きてきて。小さい頃から曲作ったりしてたから、もうなんだかちょっと飽和してきてたんですよ。自分が簡単にできないことに挑戦してみたくなったりして、だからむこうでも映画演劇みたいなアトリエに通って、そこで演劇を習ってたりしてたんですよ。で、音楽だけじゃなく、演劇も含めてアーティストとしてフランスにいたいと思ったら、ビザの発行の壁があって。とはいえすぐに仕事があるわけでもなかったし、それを満たす実績があるわけじゃないので就労ビザも簡単にとれないし。だったら一旦日本に帰って、まずは実績をつくろうと思って。 でもいざ日本に帰って実績をつくるとなっても、元々が地元の滋賀から直接フランスに行ってるので日本の芸能界事情とかもちろん知る訳もないですし、どうしようと、とりあえずタレント事務所をうけてみるかと。タレント事務所か否かしか頭の中でなかったんですよ。で、ネットで応募してたらたまたま一個受かって。でもまぁ帰ってきたのでこんな風に過ごせてるのでそれはまぁよかったですけどね。

ですね、おかげで僕らも世武さんにAFROCKにご出演いただけるし(笑)

ほんとですよね。だから今の現状に満足しているわけではないけど、今は今で楽しませてもらってるので、日本に帰ってきたことはよかったと思ってます。

ではでは最後に、世武さんのステージを楽しみにしている福岡のみなさんに一言お願いします!

当日は気心の知れたThe Cigavettesも競演できるし、個人的にすごく楽しみにしているので、それがみなさんに伝わればいいですね。福岡はほんと今私の中でとても好きな場所なので、その福岡のみなさんの前でできるのが楽しみです!

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最後は、世武さんが「電線フェチ」とうことで、電線をバックに一枚。

INFORMATION

世武裕子さん出演決定!
AFROCK FESTIVAL '12
2012.9.29 SAT @ROOMS+galleria

INTERVIEW

  • 世武裕子[Sebu Hiroko]
    ミュージシャン・ピアニスト
    滋賀県生まれ。 02年、音楽を学ぶためにフランスへ渡る。パリ・エコールノルマル音楽院映画音楽作曲科Patrice Mestral氏に師事)へ入学。在学中、96年公開アカデミー賞受賞作品「イングリッシュ・ペイシェント」のスコアを手掛けたことで有名な作曲家ガブリエル・ヤレドと、ジャン=リュック・ゴダール監督「気狂いピエロ」を手掛けた作曲家アントワーヌ・ドュアメルと知り合い、その作曲能力に賞賛を得る。 05年同校卒業。

    帰国後、ピアノと弦楽で構成されたインストアルバム「おうちはどこ?」にてデビュー。その後、くるり8thアルバム「魂のゆくえ」のレコーディングおよび全国ツアーに、鍵盤/コーラスとして帯同し、後に世武裕子名義で、くるりのトリビュートアルバム「くるり鶏びゅ~と」にもに参加した。

    フランス語/日本語で作詞した2ndアルバム「リリー」のリリースを経て、FUJI ROCK FESTIVAL ’10で初披露した楽曲を含むiTunes限定シングル「ハローハロー」を発表。

    建築物の様に音を構築する『2011年型 Architectural Pop』を見据えた創作活動を本格的に開始すると同時に、本人が出演/音楽を担当し話題を呼んだTVCF「Googleで、もっと。クロームでストリートライブ」や、現在絶賛放映中のKAT-TUN 亀梨和也出演TVCF「Panasonic Beauty ラムダッシュ"やさしい手"篇」の音楽を担当するなど、映像音楽作家としての活動も活発に行っている。
    最新アルバムは6/6に発売された『アデュー世界戦争」。

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