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VOICE 来福した旬な著名人にお話を聞いてきました。

  • PEOPLE
  • 2012.11.1 Thu

VOICE TITLE

vol.39 藤田貴大

マームとジプシー主宰・劇作家・演出家

INTERVIEW

  • 藤田 貴大[Takahiro Fujita]
    マームとジプシー主宰・劇作家・演出家
    1985年生まれ北海道伊達市出身。桜美林大学文学部総合文化学科にて演劇を専攻。2007年「マームとジプシー」を旗揚げ。以降全作品の作・演出を担当し、横浜を中心に演劇作品を発表。象徴するシーンのリフレインを別の角度から見せる映画的手法が特徴。また、役者が本来持つパーソナリティーや役者自身の質感を作品に大きく反映させ、舞台上で生まれるリアルなドラマを作品に組み込んでいる。2011年6月~8月にかけて発表した三連作「かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。」で第56回岸田國士戯曲賞を受賞。また、演劇経験問わず集まった20代~70代の参加者を対象に、発表を神奈川県相模原市指定文化財の小原宿本陣で行ったワークショップ「まいにちを朗読する。」(2011年4月)や福島県立いわき総合高等学校で演劇を専攻する生徒と発表した「ハロースクール、バイバイ」(2012年1月)、など多岐に渡る活動を行う。

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人に対する貪欲なまでの探究心。

今年、演劇界の芥川賞ともいわれる、岸田國士戯曲賞を受賞した藤田貴大さん。彼から生み出されるリアルな感覚と巧妙な演出力が、今、福岡でも話題となっている。というのも、彼が、11月13日初演となる北九州芸術劇場プロデュース公演を手掛けるというからだ。第一線で活躍する作家が、演劇の中心地ではないところで、一体どんなものを作るのだろうか。また、藤田さん主宰の「マームとジプシー」の名前の由来、作品を作る自分が「マーム(母体)」で、作品ごとにテクニカルスタッフや俳優を集め話ながら観客に伝えるという「ジプシー(放浪)」のような演劇作りによる、福岡の役者達の反応とはどんなものだろうか。公演前から私たちの興味・関心をくすぐる、強い個性の持ち主に、作品へのこだわりや新作ついて伺った。

ずっと演劇しかやってない感じですね。

演劇をはじめたきっかけを教えてください。

僕は、10歳の頃から地元の劇団で子役として出演していました。それからずっと演劇しかやってない感じですね。僕は、北海道出身ですが、上京したのは役者を目指して。20歳の時、書き始めました。なので、今はまだ演じていた時間の方が長いです。

作品を書くようになったのは何故ですか。

書き始めて気づいたんですが、好きだったからだと思います。昔から作文を書くのも、ものを作るのも好きでした。明確な事でいうと、大学生の頃ノリで劇を何かひとつやろうと仲間内で話していて。偶然、僕が書くようになりました。その頃、自分の祖父が亡くなることもあり、深く考えた事柄を書いておきたいと思いました。

今、ご自身が演じることはありますか。

それは、無いです。今は、作家と役者では、やるべき事が全く違うと思っているので、ぼくの場合、混合させる必要はないと思うんです。役者さんは、プレイに集中するべきだし、体をしっかり動かしてくれればいい。僕は、役者だった事があるので、役者がどういう事をされると嫌なのか分かります。でもこれからも作家をつづけていくと…役者の気持ちがどんどん分からなくなるのかもしれませんね。

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稽古の時、役者さんは辛そうですが、僕は観てて単純に楽しいと思いますね。

作品を作るにあたり、影響を受けたものはありますか。

たくさんあって難しいんですが…。北九州で、印象深いのは青山真治監督の、北九州を舞台にした「Helpless」「EUREKAユリイカ」「サッドヴァケイション」の”北九州サーガ3部作”ですね。北九州に来るよりずっと前に観た作品ではありますが、実際ここに訪れてもあの作品群は、北九州のイメージをよく捉えてる気がします。あとは、中上健次さん辺りの小説家です。今回の演劇に携わる事が決まった後は、自分の足で歩き、しっかりと聞いてきた事を、自分の頭の中で咀嚼し書いたような小説などを読んで来ました。

もの作りで大切にしていることは何ですか。

いつも心がけているのは、作品が自分の記憶に沿っているものかどうかという事。自分に起こった事以外は書かない。自分の感情と逸脱したような、“親が殺された”など自分の記憶とかけ離れたモチーフは、描かないようにしています。そんな事を取り上げて、もし舞台に乗せたとしても、僕はその作品を愛せるかどうか分からないので。

作品を作っていて、どういった時に面白いと感じますか。

稽古の時、役者さんは辛そうですが、僕は観てて単純に楽しいと思いますね。僕が、いつも一緒にやる役者さん達は、本当に疲れないんですよ。というより、僕に疲れた様子を見せない感じです。すべてを隠している感じですが、僕について来てくれる。すごくドライな仕事関係があるんです。ただ北九州で出会った役者さん達は、こんなに体を動かしたのが始めてで、体が驚いたせいなのか、本性があらわになるんです。それを見て、僕は怒鳴りつつも、すごく達観していて、ああ面白い人達だなと思って見ています(笑)。

役者選びで大事なのは何ですか。

東京の時は、僕の最新作を演じられるくらいの体力と心のタフさを持っている人。演技の上手さというよりは、どれくらいの体力を使ってやって欲しいのか、どれくらい粘って作品を演じてくれるのかによって若干違いはあるものの、体が出来ている人なのかどうかを見ます。

藤田さんの作品を拝見し、登場人物からぶっきらぼうな印象を受けるのに対して、物語は泥臭くて人間的なことを取り上げている所が面白かったです。言動と感情に温度差がありますね。演出で意識している事は何ですか。

記事では、僕の演出を「音楽的な身体表現をしている」と書かれる事が多く、それは嬉しいんですが、それは意識的にしている事ではなくて。僕としては、役者さんと向き合うためにただ必要だった事なんです。ダンスのように、音楽と身体を当てはめているわけではないんですよね。シーンを繰り返す事(リフレイン)を使う理由は、例えば役者さんが体力を消耗せずに言った一言よりも、体力を使って発した言葉の方がいいと思うから。息切れしながら話すとか、恐らく嫌な演出家も多いと思いますが、心と体が繋がっていない声はあまり効果や意味をなさないと僕は考えています。

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みんなから出て来たものや偶然耳にすることに反応しながら作りたい。

北九州に住んでみて、何か感じた事はありますか。

僕、じつは週に一回東京に帰るようにしてるんですよ。仕事があるからなんですが、それだけでもなく、居すぎると落ち着いてしまうから。東京に帰ると、いつも現実に引き戻される感じがあり、北九州の事を考えると、ドリーミングな、ファンタジックな場所だった気がする。それは、雲の感じや広い空とか、景色が関係しているのかもしれない。北九州は、曇空が多いですよね。工場があり、煙が立ち込めている。海風にさらされ、建物とかも少し錆びている感じがして、僕の実家辺りの風景や空気と似ている気がします。

北九州プロデュース作品の作・演出の話が来た時の率直な感想をお聞かせください。

北九州芸術劇場のプロデューサーである能祖さんを、前からすごい人なんだなと思っていました。お話を頂いた時は、僕のうだつが上がらない時で、能祖さんからポロッと言われやりたいと。その時やっていた作品、「Kと真夜中のほとりで」が、僕の集大成と思っていたものでもあったから、でも、同時に、僕自身の記憶を取り扱う事に限界を感じていました。結構、パツパツの時期だったところで、「レジデンスで北九州の人達と作る」という事に、単純に惹かれました。見知らぬ町に行けば、今までと違う事がやれる気がしたし、東京だけで作っている事にも疑問を持ち始めていました。

今回の作品で表現したいことは何ですか。

これまで、モチーフとして他人の記憶を扱わずに来たので、それをやってみたいと思っています。僕の得意の自分語りみたいなのは封印し、ここで見たものとか、ここにあるものに目を向け、自分の知らない感情などを探ってみたいと思います。自分が描きたいものをやるわけではなく、みんなから出て来たものや偶然耳にすることに反応しながら作りたい。それが、普段のクリエーションとは違うところです。

作品は、小倉の町を20人で歩き回る事を愚直にやり続けます。

役者選びは、どのように進められましたか。

話して面白そうな人を選びました。僕の思う、北九州っぽい匂いがする。生活感のある人達です。その人達を、舞台で走らせたらどんなものができるのかを、今は試しているところですね。今回は、体力勝負だけでは作れないと思っています。

オーディションの時と、稽古を始めてからでは役者さんに変化はありましたか。

今回20名でやるんですが、今までで一番登場人物が多いです。稽古場で見てると、若い子はすぐ顔が変わりますね。太るし、痩せるし。ただ、僕は男子がどう変わるのかは興味ないんです(笑)。女子はすぐ変わる。かといって、僕と関わるから変わるものではないと思いますが…。生理だったら顔に出るとか。いろいろありますよね。だから20代の頃は、沢山恋愛して、沢山傷ついたらいいと思う。役者であってもなくても。40代以上の方は、すごく安定していていいなと思います。

本作の見どころを教えてください。

今回は、囲み舞台でやるんです。そして役者は、一回も舞台袖にはけません。だから観劇する側は、同じ人達を見続けないといけない。それは、どう考えても嘘のない二時間だと思うんです。そもそも演劇は、舞台に上がった時点でフィクションだという前提がある。それは分かっているんですが、体力のキャパシティには嘘がない。この人、本当に疲れたなというのは見て分かるはず。それで、生身の役者さんを浮かび上がらせたい。演じられなくなりそうな時に出る言葉を聞きたいんです。周りからは、サディストとか言われるんですが、そんな事はないです(笑)。

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稽古場を見学させて頂いた時、緊張感がありましたね。あと稽古場には、床に、一点から四方八方へ伸びる線があって興味深かったです。

舞台では、この線は引かないんですよ。矢印のようなものは付けるつもりですが。僕は、じつは、この線の方が「リフレイン」よりも発明だと思っているんです。観ている人のアングルを変えることができる仕掛けになっています。シーンを反転させたら、同じ時間でも全く違う人のエピソードが見える。

最後に。藤田さんご自身から作品のご紹介をお願いします。

僕は、いつも自然と作品で「記憶」をテーマにしています。記憶とは、やはり誰かを失うとか、家を失うとか、何らかの喪失がともなうものだと思います。今回も北九州で、何が失われたのか、誰が失われたのかなどを、歩き周って探してみたいと思っています。だから、作品は、小倉の町を20人で歩き回る事を愚直にやり続けます。この町にある喪失を探して、みんなが歩き回ることになる。それで、海に辿り着いた時、どうなるのかを見て欲しいです。小倉在住の方や来た事のある方は絶対楽しめる作品になると思います。そして3月には、東京に持っていくので、ここに来た事がない人達に見せても、その土地に足を運びたくなるような、そんな匂いがする舞台にしたいと思います。

INFORMATION

11/13[火]~11/18[日]
■北九州芸術劇場プロデュース「LAND→SCAPE / 海を眺望→街を展望」

INTERVIEW

  • 藤田 貴大[Takahiro Fujita]
    マームとジプシー主宰・劇作家・演出家
    1985年生まれ北海道伊達市出身。桜美林大学文学部総合文化学科にて演劇を専攻。2007年「マームとジプシー」を旗揚げ。以降全作品の作・演出を担当し、横浜を中心に演劇作品を発表。象徴するシーンのリフレインを別の角度から見せる映画的手法が特徴。また、役者が本来持つパーソナリティーや役者自身の質感を作品に大きく反映させ、舞台上で生まれるリアルなドラマを作品に組み込んでいる。2011年6月~8月にかけて発表した三連作「かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。」で第56回岸田國士戯曲賞を受賞。また、演劇経験問わず集まった20代~70代の参加者を対象に、発表を神奈川県相模原市指定文化財の小原宿本陣で行ったワークショップ「まいにちを朗読する。」(2011年4月)や福島県立いわき総合高等学校で演劇を専攻する生徒と発表した「ハロースクール、バイバイ」(2012年1月)、など多岐に渡る活動を行う。

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