AFRO FUKUOKA

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VOICE 来福した旬な著名人にお話を聞いてきました。

  • PEOPLE
  • 2013.7.1 Mon

VOICE TITLE

vol.47 楳図かずお

漫画家

INTERVIEW

  • 楳図かずお[Kazuo Umezz]
    漫画家
    1936年、和歌山県高野山に生まれ、奈良県で育つ。幼い頃から絵を描くことに非凡な才能を示し、小学4年から漫画を描き始める。14歳の時に描いた『森の兄妹』、高校2年の時に描いた『別世界』が1955年に出版され、プロデビューを果たす。その後、『口が耳までさける時』『へび少女』などのホラー作品を精力的に発表し"ホラー漫画の神様"と呼ばれるようになる。代表作は『猫目小僧』『漂流教室』『まことちゃん』など。現在休筆中だが、音楽活動、TV・映画・雑誌の出演など、多忙な毎日を送っている。

TEXT BY

STAFF
AFRO FUKUOKA

福岡の情報ポータル&ウェブマガジン

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ホラー漫画の第一人者であり、日本中の少年少女にトラウマを刻みつけてきた天才漫画家・楳図かずお先生。1995年に完結した『14歳』以降、漫画は休筆中だが、TVや映画、雑誌など、漫画の枠を超えた活躍で、今なお若い女性を中心にファンを増やし続けている。そんな楳図先生の恐怖マンガの作品世界を立体的に再現したイベント『楳恐-ウメこわ-』が待望の九州初開催ということで、楳図先生が来福。マンガについて、ものづくりについて、そして今回の展覧会について。気になる内容を伺ってきた。

僕、小学生のころから、ものづくりの苦労を知ってしまったんです(笑)。

日本の文化とも言える『漫画』の創世記から活躍し、現在では”ホラー漫画の神様”との異名を持つ楳図先生ですが、漫画家になろうと思ったきっかけなどはあるのでしょうか?

絵は元々好きだったので、それは関係しているでしょうね。感銘を受けたという点で言うなら、小学4年生の時に手塚治虫先生の漫画を読んで「なんて素晴らしいんだ!」と一気にファンになったことですかね。世の中にはこんなに面白いものがあったんだって衝撃を受けたんです。その瞬間に、漫画家になろうと決めました。

楳図先生の作品は独特な絵柄のタッチも魅力だと思いますが、いつごろからこのテイストを確立されたのですか?

絵には相当苦労したというか、悩んだ時期がありましたね。僕、既に小学生の頃から「中学になったらデビューしよう!」と勝手に思っていたので、このまま手塚先生の作品に影響されていては、ただのコピーになってしまうって思っちゃったんですよ。人と違う絵を描くにはどうしたらいいんだろうって、小学生の頃から本当にそんな感じで考えていましたね。今のタッチは、子供の頃から模索して、模索模索の結果で生まれたんです。期せずして、子供の頃からものづくりの苦労を知ってしまったというか(笑)。

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やはりものづくりにおいて大切なのは、見たことのないものとか、出会ったことのないものとか、それまで存在していなかったものを産み出すということですね。誰も手がけていないものは、それだけでも作品としての資格があると思うんです。初めてのものには、みんなその資格がある。何かを作る時はそれだけを考えてこだわっていますね。過去に存在したものをもう一回描いたとしても、誰も驚いてくれないんですよ。だから、今までにないものを描くってことは、描く者としての任務というか、使命なんじゃないかなと思います。

一言で言うなら「自然が怖い」ということ。

子供の頃から、作品に対しての意識が高かったのですね。普段はどんなお子さんだったのでしょう?

普通に山の中を走り回ってましたよ。奈良の山奥で育ったので、遊びというとそれくらいしかないんですよ。実際に怖い体験をしたとかはないのですが、山の怖い話は父親からいっぱい聞かせてもらいました。「へび女」などはそれをもとに描いています。当初の作品って大体みんな山の中の話なんですね。山の中のうすら怖い感じとか、木のざわめきとか、育った環境がそのまま漫画に影響していますね。だから、漫画を描き始めた頃は、山の中は描けるんだけど、都会はうまく描けなかった(笑)。

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なるほど。楳図先生のホラーの描写の根底には「山の中で育った」ことが、深く影響を与えていらっしゃるということでしょうか。

一言で言うなら「自然が怖い」ということですよね。自然って、恐怖の種類のなかで人が一番最初に出会う怖さだと思うんです。その次の段階として「人間が怖い」ということに気づく。だから、初期に描いた作品は、どちらかというと自然への恐れが題材でした。それこそ「へび女」もそうですね。

楳図先生の作品のもう一つの代名詞でもあるギャグ漫画は、ホラーと相反するものかと思うのですが、どのように描き分けていらっしゃるのでしょうか?

単純に言ったら、ホラーは空想。笑いは現実。ありえないことと、絶対あるってこと。この違いですよね。早い話、ホラーっていうものは、怖いけど絶対起きるはずはないんです。例えば、よく「あそこには幽霊が出る!」って話を聞くけど、じゃあそれをビデオカメラでちゃんと撮ってきて放映してくれるかと言うと、そんなことは全然ない。その場の雰囲気や思い込みだけで「居たー!」とか、「寒気がする」って言ってみても、それはあくまでも個人の感覚で、ちゃんと映像として残っているものではない。もし、そんな異形なものがビデオカメラに映っちゃったとしたら、それはもうホラーじゃなくて、事件なんですよね。事件は映るけど、ホラーは現実には絶対ありえないわけです。だから安心して怖がって遊べる。起こるわけがないって安心があるから、人はホラーを思いっきり楽しむことができる。もう、エンターテインメントなんですよ。でも、人間の心の中には、ありえないとわかっていても、それを怖いと思える遺伝子がちゃんとあるから成り立っていると思うんですけどね。

独創的で個性的な作風に魅了され、芸能界でも楳図ファンを公言している方が多いと思いますが、愛され続ける作品を産み出す秘訣を教えていただけますか?

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思い切り空想を働かせ、誰も思いつかないような、とんでもない想像ができたとしても、それがどこかで現実と結び付かなければ、ただのありえない話になっちゃうと思うんです。そうなると、読者は一気に興味を失ってしまうんですよね。なので、思いついたアイディアをどれだけ現実に結び付けられるのかということをいつも意識しています。 ホラーなんてどれを取ってみても、みんなありえないんですよ。だからこそ「もしかしたら?」と思わせてしまうようなリアリティがめちゃくちゃ大切なんですよね。でも、これがなかなか難しいんです。あんまり現実ばかり描いていても、当たり前すぎちゃって面白くないですよね。僕の場合、現実ばっかりはイヤなんです。漫画の種類によっては、現実ばかりを描く内容のものがあると思うけど、それだって、どこかで笑いがあったり、意外性があったりしないとね。日記のように現実に起きることを淡々と書いているだけでは、読んでいる方に驚きはないんじゃないかな。バランス感覚が難しいところですよね。

今回の『楳恐-ウメこわ-』は九州初上陸のイベントとなりますが、見どころやオススメのポイントを教えてください。

展示では、大きな絵柄は必ずポイントになっていると思います。普通に漫画を描いている時もそうなんだけど、強調したいところは自然と大きくなりますよね。今回の展示は、漫画のコマ割りを立体的に表現した、というところもありますので。まあ、パッと入っていただければ、自然とその流れの中に導いてもらえるような仕掛けになっているので、あまり難しく考えずにご来場いただいて、作品の世界観に溶け込んでいただければ嬉しいですね。ただ、今までに読んでいただいた作品の中で印象に残っているシーンなどがあれば、それを探してみるというのも楽しみの一つかなと思います。

ありがとうございました。では、最後に九州のファンにメッセージをお願いします。

九州の皆さんは元気いっぱいですよね。今回の『楳恐-ウメこわ-』も、その元気に負けないような展覧会となっておりますので、ぜひ展覧会を観ていただいて、どっちの元気が強いか、勝負をしていただけたらなと思います。

INFORMATION

2013/7/23[火]〜2013/8/21[水]
楳図かずお恐怖マンガ展
『楳恐-ウメこわ-』
ギョエーすぎるお化け屋敷!
時間:10:00~20:00 (入場は19:30まで)
※最終日は17:00閉場
会場:天神ロフト 7F
[福岡市中央区渡辺通4-9-25]
入場料:300yen(おまけ付き)

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  • 楳図かずお[Kazuo Umezz]
    漫画家
    1936年、和歌山県高野山に生まれ、奈良県で育つ。幼い頃から絵を描くことに非凡な才能を示し、小学4年から漫画を描き始める。14歳の時に描いた『森の兄妹』、高校2年の時に描いた『別世界』が1955年に出版され、プロデビューを果たす。その後、『口が耳までさける時』『へび少女』などのホラー作品を精力的に発表し"ホラー漫画の神様"と呼ばれるようになる。代表作は『猫目小僧』『漂流教室』『まことちゃん』など。現在休筆中だが、音楽活動、TV・映画・雑誌の出演など、多忙な毎日を送っている。

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