VOICE 来福した旬な著名人にお話を聞いてきました。
VOICE TITLE
俳優
福岡の情報ポータル&ウェブマガジン
11/23[土]公開の映画『ジ、エクストリーム、スキヤキ』。どこかちぐはぐな空気を漂わせる男女4人の<エクストリーム>な旅を描く本作は、ジャンルを越えてボーダレスに活躍するクリエイター、前田司郎さんの初映画監督作。彼の真骨頂とも言える絶妙な"会話劇"が存分に落とし込められたこの作品で、大ヒット映画『ピンポン』の コンビが復活した。実に11年ぶりの共演となる井浦新さんと窪塚洋介さんのお2人に、本作の見どころと撮影秘話、そして一度知ったらクセになると称される"前田ワールド"の魅力について伺った。
窪塚:作品での共演は11年ぶりなのですが、その間も新くんが僕のライブに来てくれたりしてプライベートでの交友はあったので、特に久しぶりという感じはしなかったですね。でも、お互い演じる役柄が『ピンポン』とは全く違うものだったので、撮影前からすごく楽しみでした。
井浦:僕は、『ピンポン』での共演があったからこそ、監督や周りから求められる演技のハードルは高かった気がします。それでも不思議と、洋介君となら上手くやれるだろうという安心感と、何をしたって面白く出来るという確信がありました。
井浦:撮影に入る前に、2週間の稽古があったんです。前田監督は舞台も多く手掛けていらっしゃるし、稽古に入る前までは、きっと演技の指導をしっかりされる方なんだろうなと思っていました。でも、実際に稽古でやったことは、演技の確認というよりも前田監督が思い描いている”作品の温度”を感じる作業。前田監督って大黒柱というよりは空気みたいな方で、演技に対する指示をほとんどされないんです。でも、しっかり監督の中に作品の世界観が出来上がっているので、こちらが頭だけで考えて面白可笑しくやってもピクリとも動かない。だから、監督がどんな言動を見た時に面白そうにしているかをひたすら観察して、前田ワールドの”温度感”を探っていきました。
窪塚:そんな感じで、自然とこちらから何かやってやろうという気持ちを引き出すことが出来る方なんです。皆さんも一度会ったらきっと仲良くなりたいと思うんじゃないかな。その反面、台本はとても緻密で、どのシーンのセリフもすごく自然なんですけど、全て台本そのままなんです。アドリブはほとんど入れていません。監督が書いた台本そのものが面白いから、僕たちが何か付け足してわざと面白くしようとするとダメみたい。監督自身は、狙ったりすることなく自然な流れで面白いことが起こるのを期待しているんですよ。「噛んでくれ〜」ってね(笑)。
窪塚:全部特別なので、1つを選ぶというのは難しいですね。でも、飛行機を見上げて海外に行きたいと言い出した僕が演じる大川に対して、新君演じる洞口が「(飛行機を指して)あれ国内線だから海外行けないよ」と言ったセリフは秀逸だなと思いました。ただ、あくまで氷山の一角に過ぎなくて、こういう独特のセンスで作り上げられた会話が作中の随所に散りばめられていているのが、監督のすごいところだと思います。
井浦:作品序盤の、仏具屋にたどり着くまでの大川と洞口の長い会話が好きです。1つのセリフというより、あの一連のやり取りが印象的なんです。大川と洞口が歩きながら延々といろいろなことを話すのですが、びっくりするほど内容が空っぽで。そんな不毛な会話を長々と続けているのに、妙なリアルさがあるのが面白いなと思いました。演じている側の僕たちもすごく楽しかったのを覚えています。
窪塚:僕は、演じているうちに熱くなりすぎてしまうので、こういう温度感の作品の場合、適度に力を抜くのが大変ですね。でも、現場の雰囲気もゆったりしていたので、次第になんだか緩みすぎてしまって、全身衣装のまま自宅に帰っちゃったこともありました。晩ご飯を食べながら「ハッ!これ全身自分の服じゃない!」って気付いて(笑)。そんな感じだったので、苦労という苦労は無かったです。
窪塚:監督が選んできて下さる現場が、なんだか絶妙に中途半端なんです。特に、噴水の前での撮影の時なんて、実は背景に富士山が綺麗に見えていたんです。そんな場所にいながら、監督は壊れかけて変なところから水が出てきてしまっている噴水にしか興味が無いらしく、結局本編に富士山は一度も登場しませんでした。あれは、衝撃的でしたね。
井浦:きっと不完全なものを愛している方なんです。圧倒的なものや特別なものより、もっと身近で自然なものがいいんだと思います。
井浦:魅力が全く無いのが魅力。演じた僕から見ても、洞口って本当に何も光るところを持っていない男なんです(笑)。でも、そういう際立った良いところが無いから、不思議と愛おしく感じてしまうんです。それと、僕自身は洞口と全然違う生き方をしてきたので、考え方も真逆だったりしますが、もしかすると10代20代の頃は彼のような要素を持っていたかも知れない。そんな表裏一体さを感じながら演じていたので、すごく新鮮でした。
窪塚:大川は、周りの空気に流されていき、その過程に何かあっても疑問にも思わない。どうにもならないことに対して、そのままどうにもならないって片付けてしまうような、力の抜けた愛すべき男ですね。僕も、新君と同じで大川と自分は両極にいるタイプだと思っているのですが、可能ならパラレルワールドで彼のような生き方をしてみたい。もし、現実に大川がいたとしたら絶対友達になりたいですね。
井浦:直接的に大げさなことを伝える映画ではありません。でも、家に帰り着くまでの時間に思い返してみると、なんとなくいろいろな想いを感じることが出来る作品だと思います。大切な仲間や家族、そしてちょっと疎遠になっていた”あの人”を思い出すきっかけになったら嬉しいです。
窪塚:洞口と大川、そして大川の彼女と洞口の元カノと一緒に旅をする5人目の登場人物になって、ホームビデオを観ているような感覚でお楽しみください!きっと、より前田監督の世界観を感じていただけるのではないかと思います。
11/23[土]公開
映画『ジ、エクストリーム、スキヤキ』
■原作・監督・脚本:前田司郎
■出演:井浦新 / 窪塚洋介 / 市川実日子 / 倉科カナ 他
11/23[土]KBCシネマ 他 全国ロードショー
© 2013「ジ、エクストリーム、スキヤキ」製作委員会
その他の記事