AFRO FUKUOKA

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VOICE 来福した旬な著名人にお話を聞いてきました。

  • PEOPLE
  • 2015.11.5 Thu

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vol.67 伊藤 弘

アートディレクター

INTERVIEW

  • 伊藤 弘[Hiroshi Ito]
    アートディレクター
    1993年、京都で活動を開始したデザイン・スタジオ「GROOVISIONS(グルーヴィジョンズ)」の代表。グラフィックやモーショングラフィックを中心に、音楽、出版、プロダクト、インテリア、ファッション、ウェブなど多様な領域で活動を行う。1997年に東京に拠点を移動。近年の主な活動として、リップスライムやFPMなどの、CDパッケージやPVのアートディレクション、100%ChocolateCafe.をはじめとする様々なブランドのVI・CI、「Metro min」誌などのアートディレクションやエディトリアルデザイン、MUJI TO GOなどキャンペーンサイトのデザイン、日テレ NEWS ZEROでのモーショングラフィック制作などがあげられる。

TEXT BY

川崎 雅宣
AFRO FUKUOKA 編集長

編集部のKISS

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10年続くキャラクターというのも、なかなか珍しいんです。

東京を拠点に、様々なデザインの領域でグローバルな活動を続けるデザイン・スタジオ「GROOVISIONS」は、西日本シティ銀行のイメージキャラクターである『ワンク』を手がけていることもあり、福岡に住む我々にとっても非常に馴染み深く、親しみを覚えるデザイナー集団だ。
そして今年、ワンクが生誕10周年を迎えるということで、博多人形になったワンクに地域の子どもたちや学生などが絵付けを施した110匹と、最新の映像技術で彩る1匹を加えたユニークな展示イベント『ワンクmeets博多人形展』を開催している。今回は、地域の伝統工芸と最新技術を掛けあわせた本イベントを仕掛けるアートディレクターの伊藤さんに、開催に至るまでの裏話や展示の見どころを伺うため、展示会場となったD&DEPARTMENT FUKUOKAを訪れた。

地域に根付いている技術とのコラボレーションを。

今回の博多人形とワンクのコラボレーションが決定したきっかけなどがあれば教えていただけますか?

僕らがデザインした西日本シティ銀行の『ワンク』というキャラクターが、今年でちょうど生誕10周年となるのですが、それを機に今までずっと1匹だった黒いワンクに新しい家族ができるという展開がありまして、そのお披露目も兼ねて「ちょっとした面白いイベントができればいいね」と関係者のみなさんと話していたんです。そしたら、このD&DEPARTMENTにご協力していただけるという話になり、どんどん企画が決まっていったという感じですね。
そこで、せっかく何かするのなら博多らしいもの― 例えば何か伝統工芸的なものとか、地域に根付いている技術とコラボレーションしてみたいなと。そこから色々なご縁もあって、今回は博多人形を使ったプロジェクションマッピングも作らせていただくことになったという感じですかね。

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『プロジェクションマッピング』で絵付けをするというアイデアは、伝統工芸品との対比としても面白いと思いました。

博多人形とは一体何なのかというと『焼きもの』ですよね。『焼きもの』に『絵付け』をするというのが、博多人形の技法上の根本的な特徴だったので、その絵付けの部分で、実際に色を塗っているものもあれば、電子的にデジタルで絵付けをするという考え方があっても面白いんじゃないか?ということで企画が進行しました。そこで、福岡でプロジェクションマッピングなどを制作されている映像プロダクション『ランハンシャ』の下田さんとご一緒しながら落とし込んだ形です。

実際に拝見しましたが、色とりどりにくるくると変わっていくワンクと、その空間演出に圧倒されました。

プロジェクションマッピングを大々的にやるとなると、きっと屋外で建築物に投影するというケースが多いと思うんです。それは確かに力強く刺激的なのですが、光量や時間など、環境による制約がものすごく多くて。となると、今回のようにある程度コンパクトなクローズド環境だと、プロジェクションマッピングの持つ威力に、ダイナミックかつ体感的な臨場感を伴うので、「伝わりやすい」というのはあったかもしれないですね。

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今回のように、境界を超えた掛け合わせやアイデアが生まれるまでには、どのような思考フローやインスピレーションがあるのでしょうか。

やはり、できるだけいろいろな人に会って、様々な視点や考えを聞くということでしょうか。そこから派生する偶然の要素みたいなものも結構多いので。なるべくそういうチャンスは多く持ちたいですね。自分たちの考え方だけというよりは。いろいろな人のアイデアや意見を聞きながらやっていく方が、今回のようなコラボレーションも結局は上手くいくような気はします。

チームとしての“らしさ”と各々の“個性”との間で対話を重ねること。

今回の伝統工芸をはじめ、音楽・ファッション・アートなど、本当に様々な分野で垣根ない展開をされていらっしゃいますが、ジャンルが多岐に渡る中で『GROOVISIONSらしさ』をなくさない秘訣とは?

GROOVISIONSは現在10人くらいのメンバーで活動しているのですが、各々が『GROOVISIONSらしさ』みたいなものを考えながら、自分の個性との間で対話を重ねてものを作っているというのが、いわゆる『らしさ』に繋がっているのかなと思いますね。もちろん、それぞれの仕事において、最初の大きな方向性が決まるまでに悩むこともあったりします。でも、そこで僕が全て指示しているというわけでもない。メンバーが向いている方向が、大きく同じであるということは、僕ららしさに起因する点かもしれません。

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現在GROOVISIONSとして仕掛けてみたいと思っていることなどはありますか?

それがあんまりないんですよね。昔からそんなに夢がないんです(笑)。でも、デザインの仕事をきちっとやっていきたいということがやっぱり一番ですね。当たり前のことなのですが、ひとつのことを長くやるというのは、簡単そうですごく大変なことなんで。まあ、ちょっと地味なんですけどね(笑)。

それでは今回の展示の見どころを教えてください。

今回は博多人形というフォーマットを使ったのですが、まあいわゆる一般的な『博多人形っぽさ』みたいなものとは全くかけ離れているとは思うんですね。型も完全にオリジナルですし、絵付けも110匹が110匹、全て違います。ただ、アプローチは伝統のものと異っていても、土を焼いてそれに絵付けをするという基本的なルールだけは守っています。今回の展示をきっかけのひとつとして、みなさんのすぐ近く、博多に存在してきた技術や、伝統工芸の面白さにちょっとでも目を向けていただけたらいいのかなと思っています。
あとは、『みんなが同じフォーマットで作ったものがたくさん並んでいる面白さ』ってあるじゃないですか。それをそのまま面白がってもらえたらいいんじゃないかな。僕も実際に見てみたら、思っていたよりもずっと面白かったんで(笑)。

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ありがとうございました。では最後にAFRO読者のみなさんにメッセージをお願いします。

僕らはデザインをやっているので、キャラクターを作ることも少なからずあるんですけど、ワンクのように10年くらい続くキャラクターというのもなかなか珍しくて。逆に言うと、九州や福岡のみなさんがここまでワンクを育ててくれたのではないかと思っています。110匹+1匹のワンクたちに、ぜひ会いに来ていただければ嬉しいです。これからもワンクをよろしくお願いします。

INFORMATION

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ワンクmeets博多人形展
111匹のワンク with GROOVISIONS

イベント詳細はコチラ


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  • 伊藤 弘[Hiroshi Ito]
    アートディレクター
    1993年、京都で活動を開始したデザイン・スタジオ「GROOVISIONS(グルーヴィジョンズ)」の代表。グラフィックやモーショングラフィックを中心に、音楽、出版、プロダクト、インテリア、ファッション、ウェブなど多様な領域で活動を行う。1997年に東京に拠点を移動。近年の主な活動として、リップスライムやFPMなどの、CDパッケージやPVのアートディレクション、100%ChocolateCafe.をはじめとする様々なブランドのVI・CI、「Metro min」誌などのアートディレクションやエディトリアルデザイン、MUJI TO GOなどキャンペーンサイトのデザイン、日テレ NEWS ZEROでのモーショングラフィック制作などがあげられる。

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