君の名は。』の公開を記念し、新海監督、神木さん、上白石さんにお話を伺った。">
VOICE 来福した旬な著名人にお話を聞いてきました。
編集部のKISS
『秒速5センチメートル』『言の葉の庭』など、郷愁を誘う美しい風景描写と、移ろいゆく登場人物たちの繊細な心象を綴る日本的な言語感覚で、若い世代を中心に絶大な支持を集める気鋭アニメーション監督・新海誠監督の最新作がついに待望の公開を迎える。作画監督、キャラクターデザイン、映画音楽etc...。様々な才能が集結した本作で、主人公の声を演じるのは、自身も新海作品の大ファンであることを公言する俳優・神木隆之介さんと、オーディションでヒロインの座を射止めた女優・上白石萌音さん。豪華な制作陣にも注目が高まるアニメーション映画『君の名は。』の公開を記念し、新海監督、神木さん、上白石さんにお話を伺った。
ずっとぼんやり頭のなかにあったんでしょうね。(新海)
前作『言の葉の庭』の配給で東宝と一緒に組ませていただいて、それがすごく楽しかったんです。自分の作った映画を愛してくれる人たちに配給を任せられるというのが、こんなにも気持ちのいいことなんだなと思って「次も一緒にやりたいですね」と話していました。そんなこともあって、今回は配給だけでなく最初から東宝と一緒に、という前提で企画書を作り提出しました。それが2年前ですね。
新海:はい。ストーリーのアイデア自体は、「Z会」という通信教育のCM制作がきっかけで。実はこのCMは、『君の名は。』でキャラクターデザインをお願いした田中将賀さんと初めて仕事をご一緒した作品でもあります。CMでは東京に住む男の子と離島に住む女の子、まだ出会ったことがないけど、同じ大学を目指している2人の物語を、2分ほどの短い映像で描いたのですが、そこにすごく手応えを感じたんです。
新海:“お互いのことを知らない離れた場所に暮らす男女が、同じ方向を見ている” このモチーフには普遍性もあるし、若い世代の方にも自分事として受け取ってもらえるんじゃないかと。そこを起点に、小野小町の「夢と知りせば覚めざらましを(=夢と知っていれば目を覚ますことはなかったのに)」という和歌に着想を得た企画原案が生まれて。夢で出会い、そこに男女の入れ替わりを絡めて…と、だんだん物語の肉付けをしていきました。そしてエンディングまでの流れを大まかに決めて、あとは物語の中核を担う“彗星”であったり、“組紐”であったり…、細かな構成要素もすでにありました。それも大体2週間ぐらいで組み立てたような記憶があります。
新海:ずっとぼんやり頭のなかにあったんでしょうね。こういうことをやりたいな、語りたいなっていうのが。その企画書をもとに会議に入って、方向性を固めたところで実際に脚本を書き始めました。そうして半年くらいかけて決定稿まで仕上げていきました。
神木:何から話しましょう(笑)。
神木:僕は「秒速5センチメートル」という作品から新海監督の作品を好きになったのですが、「秒速」「言の葉」は、それぞれ30回以上は観ています。もちろん「ほしのこえ」やその他の作品も何回も観ました。 新海監督の作品の魅力は一口には語り尽くせないのですが、まず1つは空の色。それと、あとは景色です。ふとした背景もそうですし、光のコントラストもそうです。僕らの日常にあるものが、こんなにも美しく表現できるんだと気付かされます。「僕らもこんなに美しくこの現実世界を見ることができたらいいな」と、憧れを抱く映像美はもう素晴らしくて、新海監督ならではの魅力だと思います。 そしてもう1つが“音”です。“音楽”ともまた違う“効果音”といいますか。それこそ靴で歩いている音だったり、ドアを開け閉めする音だったり、風が吹いて木々が揺れる音だったり。日々、僕らが聞いているはずの音が、とても美しいと思えるんです。そして普段は何気なく聞き過ごしているそんな音たちが美しい映像と重なりあい、作中でしっかりとその存在を主張している印象があります。だからこそ、スピーカーなど、音の環境がきちんと整っている映画館では、より一層、その映像美とともに、音の持つ美しさも楽しめるのではないかなと思います。
神木:あと、監督の作品で共通する魅力は“距離感”です。監督のデビュー作である「ほしのこえ」から始まり、どの作品も“距離”がはらむ、もどかしさや切なさが描かれていて。その距離は、人間がどうしようもできない壁として現れてくる。 今回の作品も、三葉と瀧の“距離”が描かれています。映画をご覧になられた方には共感していただけると思いますが、最初は三葉と瀧はすごく近い距離に感じられるのではないかと思うんです。でも、作品の中盤では、この2人はすごく遠い場所にいるのかもしれないと感じる描写もあります。そして更に、人間が抗うことのできない“忘れる”という壁が立ちはだかる。これは、映画の設定だから…という他人事ではなくて、現実を生きる僕らも、人の名前を忘れてしまいますし、誰が何を言ったかも忘れていってしまいます。思い出したいけど思い出せない、でも大事なことを忘れてしまったような気がする。そんなもどかしい気持ちが、今回の作中では2人の壁となって、より切なさを強調している。誰もが身近に想像ができる事象だからこそ心が締め付けられて、そのあとに「切ないんだ」という言葉がついてくる。そんな作品だと思います。
新海:もうこれラジオだ(笑)。
神木:まだまだ語れます(笑)。
新海:一生語って欲しい(笑)。ありがとうございます。嬉しい。何回聞いても嬉しい。
神木:いえ、本当はもっとあります。
上白石:しゃべりにくいなあ(笑)。
上白石:そうですね。三葉は田舎で生まれ育って、都会に憧れを持っているという生い立ちの意味では、自分も鹿児島出身なので共感はありました。三葉が思い悩んでいる気持ちも理解はしやすかったです。共通点もありましたが、個人的に三葉への感情は“憧れ”の部分が一番強くて。どこまでも真っ直ぐで、正直で、嘘がつけない女の子。何て素敵なんだろうって、台本を読んですぐに三葉のことが大好きになりました。
上白石:もちろん、幸せなシーンもあれば、苦しく辛いシーンもあります。でも、三葉の中にはいつも瀧がいて、1人だけど1人じゃない。本当はいつも一緒にいるという感覚もとても心強かったです。三葉を演じるにあたっては、沢山悩みもしましたけど、不安はありませんでした。監督からの的確なご指示もあったので、一歩一歩確実に録っていったっていう感じですね。
上白石:三葉は自分からしたら憧れの女の子で、すごく遠いところにいる存在だと思っていたんです。でも、アフレコの初日に監督から「三葉は自分だと思って演じてください」と仰っていただいて。そこから三葉との距離が縮まった気がしました。最後には本当にもう1人の私みたいな気持ちにもなって。でも完成した映画を見ると、また憧れの存在に戻ったんですけどね(笑)。 アフレコ期間に悩んだりした時も、いつも三葉が隣にいてくれる相棒のような感覚がありましたし、すごく心強くて真っ直ぐな女の子が近くにいてくれたので、私も真っ直ぐ頑張ろうって気持ちになりました。
映画『君の名は。』
千年ぶりとなる彗星の来訪を一ヶ月後に控えた日本。山深い田舎町に住み、都会への憧れを抱き過ごしていた女子高生・三葉は、ある夜、東京の男子高校生になる不思議な夢を見る。見知らぬ環境に戸惑いながらも都会の生活を謳歌する三葉だったが、東京で暮らす男子高校生・瀧(たき)も、行ったこともない山奥で、自分が女子高生になる夢を見ていたー。
■原作・脚本・監督:新海誠
■声の出演:神木隆之介 / 上白石萌音 / 長澤まさみ / 市原悦子 ほか
■公式サイト:http://www.kiminona.com
2016/8/26[金]
TOHOシネマズ天神 / ユナイテッド・シネマキャナルシティ13 / T・ジョイ博多 ほか全国ロードショー
©2016「君の名は。」製作委員会
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