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VOICE 来福した旬な著名人にお話を聞いてきました。

  • PEOPLE
  • 2012.12.15 Sat

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vol.42 坂本龍一

音楽家

INTERVIEW

  • 坂本 龍一[Ryuichi Sakamoto]
    音楽家
    1952年東京生まれ。東京芸術大学大学院修士課程修了。1978年『千のナイフ』でソロデビュー。同年、細野晴臣、高橋幸宏と『YMO』を結成。散解後も、音楽・映画・出版・広告などメディアを越え活動。1984年、自ら出演し音楽を担当した『戦場のメリークリスマス』で英国アカデミー賞他を、映画『ラストエンペラー』の音楽でアカデミー賞、グラミー賞他受賞。以後、活動の中心は欧米へ。常に革新的なサウ ンドを追求する姿勢は世界的評価を得ている。1999年制作のオペラ『LIFE』以降、環境・平和問題に言及することも多く、アメリカ同時多発テロ事件をきっかけとした論考集『非戦』を監修。自然エネルギー利用促進を提唱するアーティストの団体artists'powerを創始するなど、活動は多岐にわたっている。2006年には新たな音楽コミュニティー『commmons』をエイベックスとともに設立。また、2007年一般社団法人「more trees」を設立し森林保全と植林活動を行なうなど90年代後半より環境問題などへ積極的に関わる。東日本大震災後『www.kizunaworld.com』、『こどもの音楽再生基金(http://www.schoolmusicrevival.org/)』などさまざまな被災者支援プロジェクトに関わるとともに、脱原発を訴える活動をおこなっている。

TEXT BY

STAFF
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衝動に素直になるということ。

9月、AFRO FUKUOKA[ONLINE]4周年記念として開催した「AFROCKFES」で、音楽好きな部分をアピールした(つもりの)我々ですが、今回は風雲急を告げるまさかの展開!なんと、あの偉大なる音楽家・坂本龍一さんにご対面する機会をいただいちゃいました。と、いうことで12月4日に開催された「Ryuichi Sakamoto Trio Tour」のため来福した坂本さんに、音楽や社会などで興味関心のあることを詳しく伺いました。自分独自の価値観で静かに語る教授から、今回は沢山の事を学びました。

バッハとドビュッシー。小さい頃から聴いているから、僕の原点みたいな感じです。

今回お時間いただき本当に嬉しいです。普段、地方媒体には積極的に出られたりされるのですか?

いや、どうかな〜。ツアーで来た時くらいかな。

坂本さんの好きなミュージシャンを教えてください。

バッハとドビュッシー。小さい頃から聴いているから、僕の原点みたいな感じです。

今は、ニューヨークを拠点にされていますよね。ニューヨークを選んだ理由は何ですか?

移住する前、ロンドンとかニューヨークとかパリとか、様々なところでレコーディングしましたが、やっぱりニューヨークに行く機会が一番多くて。スタジオをはじめ、楽器を手配してくれる人など音楽関係について一番理解できていたところだったからだと思います。もう随分長く住んでいるので、今はそんなことはどうでもよくなってきているけど、住むには楽なところですよ。ミュージカルもジャズも、街で毎日のように行われている。一流の人達が身近で演奏しているから音楽好きにはすごく良い街だと思います。僕自身は、そういうところには、全然行かないんだけどね(笑)。コンサートも年に一回行くかどうかくらいだけど、なんだか居心地が良くて、気がついたら22年も住んでいます。

僕は探さないと見つからないものはトレンドとは言わないと思っています。

日本にはどのくらいの頻度で来られているんですか?

年に2〜3回。年末年始とか夏に来ています。夏フェスがありますもんね。

海外から客観的にみた日本はどのような印象ですか?

日本の良いところも悪いところも見ているけれど、一般的に何が流行っているかはいつもわからない(笑)。半年くらいで流行りが終わっているから、僕が知らないものも多い。例えば、ナタデココや中国の辛いやつ、あのご飯にかけて食べるラー油も後から知りました。

そういった情報は、日本の方とのやりとりから知るのですか?

今は、メールやFacebook、twitterもあるので、そういうのから情報を知るかな。ただ、日本で流行ったものが必ず世界で流行るとは限らないから、目にしてないことが沢山あります。日本は、流行り廃りが早いですからね。

坂本さんご自身がトレンドを強く意識したというようなエピソードはありますか?

よくわからない…。そういうことには関心がないね。昔は、流行歌も1〜2年くらい長めに流行っていましたよ。当時は、すぐ消えちゃうものなんてそんなになかった。トレンドウォッチに夢中にならなくても、流行情報は自然と耳に入ってきていたと思います。今は、わざわざトレンドウォッチャーがいて、入念にリサーチした情報を流している感じだけれど、僕は探さないと見つからないものはトレンドとは言わないと思っています。何か矛盾しているかなと。

音楽に対する享受の仕方が全く変わリましたね。

今と昔では、音楽業界も変わりましたか?

音楽に対する享受の仕方が全く変わリましたね。今では、ダウンロードして聴いているわけでしょ。昔は、大きなレコードを聴いていたから。音楽業界のデジタル化は、本当に早かったと思います。80年代で、すでにCD化している。それと比べると、電子書籍化は最近のことだから、文字の方はすごく遅いと思う。ただ、ディスク形式からダウンロード形式になるのは、想像以上に時間がかかった気がします。僕は、95年くらい、インターネットが普及し始めた頃に、CDはすぐなくなると思っていました。タワーレコードに知り合いがいるから、もうCDなくなるけどどうするの?と言いに行ったこともありますよ。実際、アメリカのタワーレコードは結構前になくなっていますからね…。

デジタル化の一方で、アナログなものに対する想いが増えてきた印象もあります。

世界的に見ると、アナログ盤の出荷数は増えていますよね。CDはね、ちょっと小さすぎて愛情の対象としてはもの足りない感じがするというか。レコードは、あれだけの面積があって、そこに絵を描いたり、デザインしたり、当時の超一流のデザイナーやイラストレーター達が手がけているからアート作品としての価値もある。そのものの面積が、小さくなると、労力をかけにくいのかもしれないね。僕も、本当に一生とっておきたいものはアナログ盤でも買います。本当は、中途半端なCDとか捨ててもいいんだろうけど、SDよりもCDの方がまだ音質良いですからね。

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何でも新しい体験をすることが多い方が嬉しいから。

今回の新作ではトリオでの演奏ですが、坂本さんが一緒にプレイしたいという思うアーティストとはどんな方々なのですか?

自分に出来ないことが出来る人、自分と考えやアイデアが異なるアーティスト。自分の発想力では出来ないことが出来る人といつもやっていますね。何に対しても新しい体験をすることが多い方が嬉しいから、驚きをもたらしてくれる人とやりたいです。

今回のメンバーの魅力は何ですか?

そもそも、今回のようなピアノ、ヴァイオリン、チェロのピアノ・トリオを始めたのは、ジャキス・モレレンバウムに出会ったから。ニューヨークでジャキスのチェロの演奏を聴いてぶっ飛んで、すぐに彼を紹介してもらい楽屋に行って話しました。その年の暮れに、僕のコンサートがあったんですが、そこにお誘いして以来一緒にやっています。はじめ、バンドはピアノとチェロだけで良いとも思っていたんですが、チェロは音程が低いから、全体をカバーするヴァイオリンも入れようと。当時は、親しいイギリス人のヴァイオリニストとやっていたんですが、2011年秋のヨーロッパツアーで新しい人を入れようということになり、You Tubeを使ってオーディションをしたんです。動画で、音楽性やルックス、人となりを見ました。3次選考まで行い、最後残ったのがジュディ・ カンさんです。彼女は、技術力と表現力、どちらも持っている。表現の幅がすごく広くかったんです。

アルバム、コンサートの聴きどころを教えてください。

それは難しいですね〜。どういう風に音楽を聴くかというのは難しい。自分独自の受け取り方をしてもらって良いと思います。この曲は、悲しい音楽だとか誰かが決めるものでもないから。99人が悲しいと思っていても、自分がそう思わないなら、それも正解。それぞれの人が固定概念にとらわれず、自分の感じたままに聴いてもらえたら良い。コンサートは、100%生楽器での演奏だから、プレイヤーやお客さんや場所などが絡まりあって、一緒に音楽を作れるというのが嬉しいですね。コンサートには呼吸するくらい自然に参加して欲しいと思います。欲を言えば、お客さんから音楽に対するバイブレーションを送ってもらえたら最高ですけどね。

コンサートでは、何曲くらい演奏されるのですか?

1時間半くらいあるんですが、18〜20曲くらいですね。ただ、コンサートは毎回内容が違いますからね。生演奏は生きものだから、固定化されているCDやハードディスクのように、スイッチを押せばすぐ100%になるものとは違います。

お客様の反応で、地域性を感じることはありますか?

そうですね。やっぱり日本と海外では結構違います。日本の中でも、すごくシャイなところとそうでないところもあります。

福岡の方々はどんな感じですか?

中間くらいですかね?大阪辺りは、全然シャイではなくて。東京、ロンドン、ニューヨーク辺りはクールな気がします。ロンドンが一番冷たいかな。お客さんが全員評論家みたいな感じで、何か意思がはっきりしているというか。反応良い時は立ち上がる人も多いし、時間の無駄だと思うと帰ってしまう。ニューヨークもそう。だから、良いと思った人は、斜に構えている人達を引きこもうとして、最後はみんなを巻き込んでスタンディングオベーションしたりするんですよ。

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少しでも多くの活動を通し、都会に住んでいる人が森にも関心をもってもらえたらと思います。

話は変わりますが、最近行きたい場所はありますか?

アイルランドとアイスランドです。どちらも寒いところ。北欧全般的に好きですね。

どういったところに惹かれるのですか?

両方とも、音楽が豊かな国だと思います。最近は、アイスランドのアーティストもよく日本にも来ると思うんですが、シガー・ロスとかね。ヨーロッパなど他の国とも違う音楽のムーブメントがあって面白いですね。アイルランドは、そもそもケルト音楽などの伝統的な音楽とポップスが共存していていいですね。U2の国でもあるよね。

社会的な活動に多々取り組んでいらっしゃいますが、今後の活動ではどのようなヴィジョンをお持ちですか?

現在6年目となる「moreTrees(モア・トゥリーズ)」で、植林や森林保護の活動をしています。そこで、日本の12ヶ所の森と協定を結んでいるんですが、今後もその数は増えそうです。実はこのプロジェクトを始めたのは、僕の思いつきから。ただやりだしてみると、すごく重い仕事でした。実際、目の前にある山を生業としている人達には、日本の林業に若い人が少ないことから比較的ご年配の方が多いんですね。そんな方々が一生暮らすところを、都会に住む僕達が手を出すのはどうなのかと考える時もありました。僕らも真剣にやっていることではありますが、やっぱり真剣さの度合いが違いますからね。僕達も覚悟を決めてやらなければと考えています。

moreTreesに対する周りの反応は、当初と変わりましたか?

moreTreesは、プロジェクトの主旨がわかりやすいから反対する人も少ないんですよね。例えば、原発に関することになると、賛成派か反対派かなどでよく議論されていると思うけど、moreTreesの方はプロジェクト自体を否定する人はほとんどいない。プロジェクトの進行スピードも当初の想定より早く、5年間で12ヶ所に。今は、フィリピンにも植林しているから13ヶ所目をやっています。本当に微力だとは思いますが、日本だけでも森は何十万もある。やらないよりはマシですよね。少しでも多くの活動を通し、都会に住んでいる人が森にも関心をもってもらえたらと思います。

INFORMATION

●映画「新しい靴を買わなくちゃ」オリジナル・サウンドトラックリリース
●坂本龍一 ニューアルバム「THREE」リリース
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  • 坂本 龍一[Ryuichi Sakamoto]
    音楽家
    1952年東京生まれ。東京芸術大学大学院修士課程修了。1978年『千のナイフ』でソロデビュー。同年、細野晴臣、高橋幸宏と『YMO』を結成。散解後も、音楽・映画・出版・広告などメディアを越え活動。1984年、自ら出演し音楽を担当した『戦場のメリークリスマス』で英国アカデミー賞他を、映画『ラストエンペラー』の音楽でアカデミー賞、グラミー賞他受賞。以後、活動の中心は欧米へ。常に革新的なサウ ンドを追求する姿勢は世界的評価を得ている。1999年制作のオペラ『LIFE』以降、環境・平和問題に言及することも多く、アメリカ同時多発テロ事件をきっかけとした論考集『非戦』を監修。自然エネルギー利用促進を提唱するアーティストの団体artists'powerを創始するなど、活動は多岐にわたっている。2006年には新たな音楽コミュニティー『commmons』をエイベックスとともに設立。また、2007年一般社団法人「more trees」を設立し森林保全と植林活動を行なうなど90年代後半より環境問題などへ積極的に関わる。東日本大震災後『www.kizunaworld.com』、『こどもの音楽再生基金(http://www.schoolmusicrevival.org/)』などさまざまな被災者支援プロジェクトに関わるとともに、脱原発を訴える活動をおこなっている。

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