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VOICE 来福した旬な著名人にお話を聞いてきました。

  • PEOPLE
  • 2015.9.15 Tue

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vol.63 堤幸彦

映画監督・演出家

INTERVIEW

  • 堤幸彦[Yukihiko Tsutsumi]
    映画監督・演出家
    1955年生まれ。1988年映画監督デビュー。以降、映画に留まらずTVドラマ、舞台、PVなど幅広い分野で活躍。TVドラマでは『金田一少年の事件簿』(95年)、『ケイゾク』(99年)、『トリック』シリーズ(EX)(02年〜)など手掛ける作品が次々とヒット、一躍人気演出家となる。映画では『20世紀少年』3部作(08~09年)、『BECK』(10年)、『エイトレンジャー』(12年)など多数のエンターテインメント映画を手掛ける一方で、『明日の記憶』(06年)、『MY HOUSE』(12年)、『くちづけ』(13年)、『悼む人』(15年)など、社会派作品も意欲的に発表。被災地を舞台にしたTVドキュメンタリードラマ「Kesennuma,Voices.東日本大震災復興特別企画~堤幸彦の記録~」(12~14年)も制作している。

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生きていく上で大切な価値観を問う

1995年に発表した東野圭吾による「天空の蜂」を、「SPEC」シリーズ、「20世紀少年」3部作など話題作を多数手掛けてきた堤幸彦監督が映画化。史上最悪の原発テロ事件解決に向け奔走する人々の8時間のドラマを描いている。東日本大震災による原発事故を経験した日本人に、あらためて社会性や人間性を問いかける本作。これからの人生をどう生き抜くか、誰もが考えさせられるテーマ性の強い映画について、監督に詳しく制作エピソードを伺った。

20年、映画化されることのなかった大きなテーマを持った作品を手掛けることとなり、堤監督ご自身はどのような思いを抱きましたか?

20年前の小説ではありますが、現代に通じるところが非常に多い作品だと思います。原子力発電への賛否や、目的があいまいにされている軍事機器のこと、貿易産業についてなどさまざまな社会問題が取り上げられています。また、何の疑いもなく、会社組織で働いていることが、自分だけでなく家族に対してどんな影響を与えているのかなど…。本作は、そんな人生における普遍的で身近な問題が緻密な文章で書いてある。事細かに描かれた舞台設定が、あの3.11を経験した私達の心にグッと迫るものがあるんですね。この小説を原作として、映画を作ってくれと言われた際、正直私は躊躇しました。

今の時代には、この作品を通して考える時間が
必要なのだと感じました。

そんななか、堤監督の背中を押すことになったきっかけとは何ですか?

ためらいながらも、今の時代には、この作品を通して考える時間が必要なのだと感じました。そこからは、短期間でこの作品を作り込むにはどうしたらよいかだけを考え、僕の思う今最高のスタッフを揃えました。VFXチームをはじめ、ハリウッド映画にも通用する音楽演出の方々、最高級の役者達などプロ中のプロを集め、みんなで戦いたいなと。原作の持っているテーマ性を打ち出しながらも、2時間18分、エンターテインメント性を損なわずに観ることができるものを目指しました。

脚本を見た際の率直な感想をお聞かせください。

初めに見た時から、細かいことが気になりました。例えば、「ヘリコプターが空を飛んでいる」と場面設定が書いてあるのですが、具体的にどの辺りをどのように飛んでいるかなどはなかったので映像をどう見せるか悩みましたね。読んでいる時は、ずっとそんなドキドキ感がありました。演技に関しても、素晴らしいキャストが決まっているなかで、誰の個性を強く出すか、全体的にどうまとめるのが求められていることなのかをずっと考えていました。僕は、今年60歳になるんですが、代表作とも言える作品に出会えて本当に良かったと思っています。

少年時代の科学の夢とも言える
「サンダーバード」を参考にしました。

書籍のなかで空想上に存在した「ビックB」が完成し、最初に見た時の感想を教えてください。

とても感慨深いものがありましたね。あの形に行き着くまでには紆余曲折あったので。まず、少年時代の科学の夢とも言える「サンダーバード」を参考にしました。ただ、それが未来を感じさせるものだけでなく、より怖い顔つきになったらどうなるだろうというのを想像して作っていきました。まさに、思い通りのものが出来たと思います。

「ビックB」の開発において、とくにこだわった点は何ですか?

ヘリコプターの飛行力学を理解しなければ、最高のアクションが成立しない。それをクリアにしつつ、誰もがびっくりするくらいの大きい機体を作りたかった。具体的に言うと、ロシアのアエロフロートが保有する世界最大のヘリコプターと同じくらいの大きさにしたいと思っていました。一番こだわった点は、ビックBのリアリティですね。空に浮かしてみると、リアリティを出すのが実はとても大変なことで…。早く動いていくものの方がリアリティを出しやすく、ホバリングしている状態のヘリコプターの動作が難しかった。また、巨大ヘリコプターにするというのも簡単にはできないことでした。世に現存するヘリコプターの一番大きいサイズに相当するものは、自衛隊がレスキューへ行く際の平均的な大きさで決定されています。日本の航空機というのは、敗戦という要素が色濃く影響していて、日本で大きな飛行機を作るのはアメリカとの関係性もあって難しいことなんです。大きいヘリコプターは、どういう位置づけなのかが問われる。映画では、ライセンス生産の、フライバイワイヤの機能を持った航空機の設定なのですが、最大限の大きさを持った航空機がどんな意味合いがあるのかなど問題提起をしています。その意味合いについては、あまり大きく出してはいませんが、その辺に迫り、詰めると細かいディテールが出来てくるんですね。ドアはどのくらい開くべきか、後ろのスロープの角度はどのくらいがいいのかなどを決定してから、何を載せるものかなどを考えていきましたね。

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映画は「原発テロ事件」を描く一方で、親子愛についても触れられている作品でした。個人的には、「ビッグB」を開発した設計士の湯原(役・江口洋介)と一人息子(役・田口翔大)のやりとりが印象深いです。江口さんはもちろんですが、田口さんもとても表情豊かな演技をされていました。

田口翔大さんは、芸達者なお子さんでしたよ。とても役者としてのスキルが高い人。撮影では段取り以外、感情の変化などの細かいことは言わずとも、こちらの意図を汲み取ってくれる方でしたね。ビックBが犯人にハイジャックされ、そこに取り残された子どもの役を演じた彼ですが、“もう助けてもらえないんだ”と思った瞬間の、驚き方はいつ見直しても上手かったなと思います。

今回の作品は、日本を代表する名優たちが集結しているという点でも注目されていますね。

そうですね。テロを阻止する作戦司令部の面々には、最高の演技をしてもらいました。犯人による制限時間があるなかで、さまざまな試みに出るも、自分達の無力さを思い知ることになる。普段ありえないような困惑した状況なのですが、設定を伝えてすぐ、「ハイ・本番」と言っていたので大変だったと思います。

今回は、あまりテイクを重ねることはせず、演技を吟味することもなくやってもらいましたね。リアリティを重視したいと思っていましたし、声量や顔の向きについてもその場の流れを出すほうが良いと思いました。演技が上手く、面白い人ばかりだったので、こちらも見ていて感心することが多かったです。

男女問わず、手に汗握る映画になっているかなと。

堤監督ご自身が印象深いシーンはありますか?

いっぱいありますね…。どこかひとつに意味を持たせた訳ではなく、全シーンに何らかのメッセージがある作品です。それが、これみよがしにというか思わせぶりなものではなく、よくよく考えると分かるというつくりになっています。物語の背景、撮影場所、CGの作成設定についても、全カット注意しながら作ったという経緯がある作品なので、思い入れが強いです。また、事件を通じて根深い問題があった父親と息子が関係を修復し、絆を深めていくのですが、救助された我が子を見る父親の目が印象的であり、子どもも、やっぱりこの人が父親で良かったと思っている姿に何とも言えない感動を覚えました。自分で撮っていて、「感動する」なんて気持ち悪い話ですが(笑)。サラッとしたシーンでも、僕のなかでは大きなテーマを持ったシーンがたくさんあります。

ストイックな仕事ぶりの男性達を描いている作品でもあると思いますが、女性に観てもらうために何か意識したことなどありますか?

何もせずとも、魅力的な男性が出ていますから。江口さんだったら、どんな駄目な旦那さんでもきつく見えないですし、本木さんは、振り向くだけでミステリアスで魅力的ですからね。男祭りの様相がある訳なのですが、企業戦士のストーリーではなく、仕事の犠牲になる家庭のことや複雑な恋愛模様なども描いているので、女性が観てもうなずけると思います。男女問わず、手に汗握る映画になっているかなと。また、日々生活しているなかで目をそむけてはいけないテーマ性も、一つひとつ僕なりに追求しているつもりです。

最後に、読者へメッセージをください。

幅広い世代の方々に楽しんでもらい、考えていただける作品となっています。20年前の本を映画にしましたが、VFXや俳優の演技、大きな仕掛け、音楽、テーマソングに至るまで、日本映画が出来る今最高峰のものをすべてつめこんだものです。今、必要な映画です。ぜひ映画館で体感して欲しいです。

INFORMATION

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公開中 映画『天空の蜂』
人気作家・東野圭吾が1995年に発表した傑作小説を、堤幸彦監督が映画化。原子力発電所を題材とした社会派サスペンスとなっている。最新鋭の大型ヘリを手に入れたテロリストが「日本全国の原発の停止」を求め、稼働中の原発上空でホバリングさせるテロ事件を描く。東日本大震災による原発事故を経験した日本人へ、改めて社会と人間の在り方を問いかける。

■ 監督:堤幸彦
■ 原作:東野圭吾
■ 脚本:楠野一郎
■ 出演:江口洋介 / 本木雅弘/仲間由紀恵 / 綾野剛 / 柄本明 / 國村隼 / 石橋蓮司 / 佐藤二朗 / 向井理 / 光石研 / 竹中直人 / やべきょうすけ / 手塚とおる / 永瀬匡 / 松島花 / 落合モトキ / 石橋けい 他
■ 公式サイト:http://tenkunohachi.jp/

福岡中洲大洋 / T・ジョイ博多 / TOHOシネマズ天神 / ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13 / ユナイテッド・シネマ福岡 他にて公開中
©2015「天空の蜂」製作委員会

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  • 堤幸彦[Yukihiko Tsutsumi]
    映画監督・演出家
    1955年生まれ。1988年映画監督デビュー。以降、映画に留まらずTVドラマ、舞台、PVなど幅広い分野で活躍。TVドラマでは『金田一少年の事件簿』(95年)、『ケイゾク』(99年)、『トリック』シリーズ(EX)(02年〜)など手掛ける作品が次々とヒット、一躍人気演出家となる。映画では『20世紀少年』3部作(08~09年)、『BECK』(10年)、『エイトレンジャー』(12年)など多数のエンターテインメント映画を手掛ける一方で、『明日の記憶』(06年)、『MY HOUSE』(12年)、『くちづけ』(13年)、『悼む人』(15年)など、社会派作品も意欲的に発表。被災地を舞台にしたTVドキュメンタリードラマ「Kesennuma,Voices.東日本大震災復興特別企画~堤幸彦の記録~」(12~14年)も制作している。

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