AFRO FUKUOKA

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VOICE 来福した旬な著名人にお話を聞いてきました。

  • PEOPLE
  • 2018.1.30 Tue

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Vol.86 松嶋菜々子

女優

INTERVIEW

  • 松嶋菜々子
    女優
    神奈川県横浜市出身。
    NHK連続テレビ小説「ひまわり」でヒロインに抜擢され、その後「魔女の条件」「やまとなでしこ」大河ドラマ 「利家とまつ~加賀百万石物語~」「救命病棟24時」シリーズ、「家政婦のミタ」などの数々の話題作に主演。またドラマだけでなく、映画、CM、雑誌など幅広いメディアで活躍中。

TEXT BY

しばた たみ
AFRO FUKUOKA ふく編集長

福岡糸島生まれ。カルピスとヤクルトが好きです。カタカナと横文字に弱いです。 へらへら:★★★★☆ 【特徴】どんな感情でも眉毛が下がっており、だいたい目がありません。 http://tamitawi.tumblr.com/

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長年に渡って愛されてきた作品だと、共演者としてファンとして納得した完結作。

2010年4月に連続ドラマとしてスタートした東野圭吾原作の「新参者」シリーズ。 阿部寛演じる日本橋署に異動してきた刑事・加賀恭一郎が、謎に包まれた殺人事件の真犯人を探すというミステリー要素と、事件の裏に隠された人の心の謎を解くというヒューマンドラマ要素がこれまでにない“泣けるミステリー”として大きな話題に。2本のスペシャルドラマ「赤い指」「眠りの森」、そして映画「麒麟の翼 ~劇場版・新参者~」を経て、1/27[土]からシリーズ完結作となる「祈りの幕が下りる時」が劇場公開される。今回、ストーリーの鍵を握る美しき舞台演出家・浅居博美を演じる松嶋菜々子さんに新参者シリーズへ初出演される心境や作品への想い、エピソードを伺った。

ー本作で「新参者」のシリーズ完結編ということで、出演の話を頂いた時にどのように思われましたか?

(松嶋さん・以下敬称略)「新参者」シリーズはTVシリーズからのファンだったのでとても光栄に思いましたし、台本を読ませて頂いたら、まさしく完結編に相応しい内容でした。今回、私と同じく福澤監督も「新参者」シリーズへ初めて参加されたのですが、福澤監督が指揮をとられることで、また新たな良さがプラスされている感がありました。緊張して撮影に挑むというよりは、ワクワクして現場に入ったという印象ですね。

ー実際に福澤監督から演出上で具体的な指示はありましたか?

(松嶋) 福澤監督とはこれまでに何作もご一緒しているのですが、あまり細かい打ち合わせをされないんですね。私も、元々演出について細か質問するタイプではないのと、テストで何かあれば教えて下さいというスタンスなので、今回も細かく指示を頂いたわけではなかったです。ただ、クライマックスのシーンで、私の演じる、浅居博美の感情をどこまで表現するのかというところでは、監督から『ドンっとやっちゃってください!』というご指示を頂いたので、思い切ってやらせていただきました。

ー撮影で大変だったところはありますか?

(松嶋) そうですね。本作の謎解きのキーワードとなる日本橋の「橋洗い」のシーンでしょうか。「日本橋」保存会や地元町内会を中心に約1,800人ほど参加されている年に一度、橋の汚れを落とす行事なんです。 そのシーンで、「橋洗い」の日に実際に撮影したのですが、その他の引きの画は前の年の「橋洗い」の際日に撮影に行っていたと聞き、2年がかりの入念な計算の積み重ねを元にあのシーンが作り上げられた感じがして印象深いです。

ー今回、浅居博美という役を演じるにあたって意識されたことなどあれば教えて下さい。

(松嶋)どの役の時もそうなんですが…その役をどれだけ理解し、味方になってあげるかということでしょうか。今回は特に極端な役だったなと思いますが、意識している事といえば、そういう気持ちで役を見ると、実はその人なりに思うシーンや背景が見えるような気がします。この作品は、凶悪犯や猟奇的な犯人は出てきませんが、誰もが何らかのきっかけで犯罪に走ってしまうような、人の弱さや嘘がテーマになっています。この博美役の元々芯に思あるのは「家族愛」であったりするので共感はしやすかったですね。家族だからこそ、深くこじれてしまったり、血の繋がりがあるからこそ問題が複雑化することはありますから。なので、複雑に考えず本当にストレートにそのまま演じさせて頂いた感じです。

ー演じていて楽しかったシーンはありますか?

(松嶋)浅居博美の部屋に、加賀さん(阿部寛)が訪ねて来て対峙するシーンが楽しかったですし、本作の最大の見どころのひとつだと思います。浅居博美は、壮絶な過去を隠し、女優になり、舞台演出家として別の人生を生きている。職業としても嘘をつくことが当たり前であり、そこに罪悪感もない。だんだんとストーリーが進むにつれ、核心に迫っていく中で、加賀に対して親しみが湧いてきたりする、彼女の複雑な思いを描いているシーンだと思いますね。嘘でがんじがらめになっている彼女の人生の中で、本当の事を告白できる、暴かれる……『これで、もしかしたら私全部喋って私は自由になれるのかもしれない』という演じる楽しみもあったんだろうなぁという風に思いました。

ー嘘という、誰しもが日常で使ってしまう些細なことが今回大きく事件として膨らんでいきますが、嘘をつくということは浅居博美にとってどういうことだったと思われますか?

(松嶋) 嘘をつくことが、彼女にとっては生きていくための手段だったとすると…けして責められないなぁと思ってしまいますね。だから彼女は女優という道を選んだのかもしれません。そして女優をやっているうちに、本当に自分が誰だか解らなくなったから、舞台演出という別の道を選んだのかと。嘘ではなく、物語を作り上げる(演出する)ふうに自分の気持ちを変えていったのだと思います。その嘘は、けして誰かを貶めようとかでは無く、誰かを守るための嘘だったりする。けれどそれが色んな出来事によって犯罪へと繋がっていってしまう…。私自身、嘘に関しての考え方がこの作品によって変化したように思います。

ー共演者の中で印象に残った方はいらっしゃいますか?

(松嶋)共演者の方とは打ち合わせや会話はほぼなく、本番前のセリフのやり取りのみでした。 元々、新参者のファンだったので、やはり阿部寛さんと初めてご一緒したときは『本物の加賀恭一郎がいる!』という嬉しさがありましたね。『あのスーツって、ずっと変わらないのかな?それとも今回新調したのかな?』とか(笑)、いち視聴者目線で楽しく現場に参加させて頂きました。

ー阿部寛さんとはどのようなやりとりをされましたか?

(松嶋)撮影中は緊迫したシーンが多かったので、空き時間の会話はあまりなかったのですが、映画のキャンペーンでいろんなところをご一緒する際に阿部さんご自身に加賀恭一郎のキャラクターであるチャーミングな一面があるなぁと感じました。もちろん原作・台本にもその一面は描かれているんですが、阿部さんご自身が持っていらっしゃる魅力が自然と加賀恭一郎へ流れているなぁと思いましたね。その魅力が存分に活かされている作品ですし、だからこそ長年に渡って愛されてきたのだなと、共演者としてファンとしてすごく納得しました。

ー松嶋さんと同じ「新参者」として参加された福澤監督がシリーズ完結作となる作品にもたらしたものとは何だったんでしょうか?

(松嶋)本作が新参者シリーズの完結ということで、主演の阿部寛さんは色んな想いがあったと思います。今回、新たに福澤監督が入られて、新しい演出・新しい目線で物語が描かれることで8年間分の成長やその想いを投影できたのではないでしょうか。今まで加賀恭一郎の心の中はあまり見れていなかったと思うのですが、本作では加賀恭一郎の原点に深く関わるストーリーになっていることもあり、加賀の心の中を表した台本でした。あえて見せない男の心中をあえて切り撮る演出が斬新だなぁと感じました。今までのファンの方はもちろん、この「祈りの幕が下りる時」だけを観ても、楽しめる作品になっています。

INFORMATION

映画「祈りの幕が下りる時」


http://inorinomaku-movie.jp/

東京都葛飾区小菅のアパートで女性の絞殺死体が発見される。被害者は、ハウスクリーニングの会社で働く滋賀県在住の押谷道子。殺害現場となったアパートの住人・越川睦夫も行方不明になっていた。松宮(溝端淳平)たち警視庁捜査一課の刑事たちが捜査にあたるが、押谷道子と越川睦夫の接点がまったく見つからず、捜査は難航する。滋賀在住の押谷が何故東京で殺されたのか。やがて捜査線上に浮かびあがる女性演出家・浅居博美(松嶋菜々子)。押谷道子は学生時代の同級生である浅居博美を訪ねて東京に来たことが分かるが、浅居博美と越川睦夫の間にも接点がなく、捜査は進展しない。松宮は近くで発見された焼死体との関連を疑い、捜査を進めるうちにその遺品に日本橋を囲む 12 の橋の名が書き込まれていることを発見する。
その事実を知った加賀恭一郎(阿部寛)は激しく動揺する。それは孤独死した加賀の母に繋がっていた――。

INTERVIEW

  • 松嶋菜々子
    女優
    神奈川県横浜市出身。
    NHK連続テレビ小説「ひまわり」でヒロインに抜擢され、その後「魔女の条件」「やまとなでしこ」大河ドラマ 「利家とまつ~加賀百万石物語~」「救命病棟24時」シリーズ、「家政婦のミタ」などの数々の話題作に主演。またドラマだけでなく、映画、CM、雑誌など幅広いメディアで活躍中。

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