AFRO FUKUOKA

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VOICE 来福した旬な著名人にお話を聞いてきました。

  • PEOPLE
  • 2013.8.1 Thu

VOICE TITLE

vol.48 熊川 哲也

アーティスト / K-BALLET COMPANY主宰

INTERVIEW

  • 熊川 哲也[Tetsuya Kumakawa]
    アーティスト / K-BALLET COMPANY主宰
    北海道生まれ。10歳より久富淑子バレエ研究所にてバレエを始める。1987年に英国ロイヤル・バレエ学校に入学。89年、ローザンヌ国際バレエ・コンクールで日本人初のゴールド・メダルを受賞。同年、東洋人として初めて英国ロイヤル・バレエ団に入団し、同団史上最年少でソリストに昇格。93 年、プリンシパルに任命された。 98年に同団を退団し、99年、自身のバレエ団であるKバレエ カンパニーを創立。芸術監督として、古典作品の上演を中心に活動を続け、これまでに「ジゼル」「眠れる森の美女」「白鳥の湖」「くるみ割り人形」「海賊」「シンデレラ」など、自身の版として古典全幕作品だけでも9作ものレパートリーを上演・主演。2012年1月、東京・渋谷Bunkamuraオーチャードホールの初代芸術監督に就任。2013年春に紫綬褒章受章。

TEXT BY

STAFF
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感情の赴くままに表現すること。

世界的バレエダンサーの熊川哲也さんが主宰する「Kバレエスタジオ」が、東京の小石川、恵比寿、吉祥寺、横浜に続き、遂に福岡に誕生する。福岡の都市の魅力に"ショッピング"や"食文化"が挙げられる中で、ここが新たな魅力のひとつ、"芸術文化"の発展の地となりそうだ。ヨーロッパをはじめとして、あらゆる国でトップレベルの舞台に立ってきた熊川さんがつくるバレエスタジオとは一体どういった所なのか、どんな新しい価値観を創造するものなのか、先日来福した主宰者の熊川さんご自身に、気になることを伺った。

若者の活気が満ち溢れ、街が明るいイメージです。

福岡の街や人に対するイメージはありますか?

福岡へ遊びに行っているうちに住むようになった人が、僕の周りに何人もいますよ。僕も15年間、カンパニーの公演などのために年1〜2回のペースで福岡を訪れていますが、いつ来ても飽きない街です。食文化が素晴らしいのはもちろん、街づくりや街の形が特長的なので、街歩きや屋台に行くのが楽しみです。そして、暖かい気候のおかげか陽気な人が多いですよね。若者の活気が満ち溢れ、街が明るいイメージです。

東京以外では初となる開校ですが、天神イムズに開校することとなった経緯を教えてください。

Kバレエ カンパニーは、年2回全国ツアーをしており、福岡にはよく来ていたものの拠点を作ることは全く考えていなかったです。また、Kバレエスクールとしては、関東近郊から徐々に展開していこうと考えていました。いつか5大都市それぞれに拠点が置けたら良いなと考えていたくらいです。実は、突然開校への話をいただきまして、それからビジュアライズしました。きっとご縁があるのだろうと直感を信じて話を進めましたね。天神イムズは最高のメディア集積地であり、カルチャー発信地です。そんな誰もが知っている天神イムズであれば、これからさまざまな可能性が広がっていくだろうと決心しました。

日本でバレエ文化を継承するためには、必然的な環境だったのですね。

新幹線が開通した後の文化の発展の仕方を見ても、地方が情報感度の高い都心部と繋がることによって、情報の伝達スピードはグッと上がります。だからこそ、東京、大阪、名古屋、福岡、札幌の5大都市には拠点をつくる必要がありました。それぞれの地域でバレエダンサーを夢見る少年少女達に向けて、最高のバレエ教育と環境を提供したい。また、将来的にKバレエ カンパニーのダンサーとして舞台に立てるようなスターを発掘したいです。僕達は、各地からプロフェッショナル・ダンサーを生み出すという明るい未来のために活動しています。

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僕は”無言の世界で表現することの面白さ”に惹かれているのだろうと。

熊川さんご自身がバレエを始めた当初はどんな生徒でしたか?

僕は、小学4年生の頃バレエを始めました。当時は、バレエは女の子が習うものだという固定観念がありましたし、東京とは違い札幌にはバレエをやっている人がとても少なくて。多感な時期でもあったので、いろいろな人の目が気になりましたね。ただ、僕は昔からポジティブな人間なので(笑)。人とは違った環境であることに特別感を感じていました。普通の男の子だったら、野球やサッカーなどスポーツをしたり、友達とゲームをしたりして遊んでいるところなのに、僕は違う。女の子に囲まれる中、クラシック音楽を聞きながら、稽古着を着て踊っている。普段とは異質な空気の中にいるのですが、それを完全に楽しんでやっていました。

バレエを習い始めたきっかけは何ですか?

僕の従兄弟がバレエをやっていたからです。最初は、彼を茶化しに行っていただけ(笑)。それが、ミイラ取りがミイラになった感じで、いつの間にか習い始めていました。バレエは、やはり一朝一夕にしてできるものではないですからね。難しい技やスタイルが徐々にできるようになっていくのが、とにかく嬉しくて。ゲームをクリアしていくような達成感がありました。僕は、幸福なことに、両親から絵画や英語、剣道、野球、水泳など多種多様なスクールに通わせてもらいました。その結果、続いたのがバレエです。継続することで、自分の自信にも繋がりましたし、バレエには本当に感謝していますよ。バレエの神様がいるならば、そこで恥じない活動をしていたいと思っています。

バレエに魅せられた理由を教えてください。

バレエとの接し方は、年代によって全く違うものなんです。10代は、バレエのスタイルを自分のものにしようと必死でした。上達していく自分の姿に虜となり、夢中で踊り続けました。20代は、自己表現することを楽しみました。30代は、バレエの魅力をどういう風に紹介していくと良いのかをずっと考えていましたね。40代の現在は、これまでよりスピリチュアルな世界で、バレエと結びついていたいと思っています。ただどの年代でも、僕は”無言の世界で表現することの面白さ”に惹かれているのだろうと。例えば、空気や水は手では掴めないものですよね。それを掴もうとした時、空気は圧縮される。その圧縮された空気が、弾ける時に生まれる何かがあります。それと同じで、何かをきっかけに溢れだす感情が表現だったり、オーラだったりするんだと。バレエは、チャイコフスキーやベートーヴェンなど偉人達が残した素晴らしい音楽に対して、どんなストーリーを感じ、そこにどう自分を重ねるのかという創造力が問われます。僕は、神々しくも脈々と受け継がれる偉人達の魂に思いを馳せながら、メディテーションすることにずっと取りつかれているのかもしれません。

自分の中にあるさまざまな感情に触れることで、表現方法の幅ができるのだと思います。

バレエダンサーは、感受性が豊かであることが大切なんですね。

そうですね。僕は、さまざまな状況や要素に対し、つねに心を動かされています。そういったことの蓄積が、やはり今の自分を作ったのだと思います。だから何をするにも、そこから感動を見つけようとしますね。そして自分が知らないことは、どうしても理解したいと思います。分かった時の感動がたまらなく良いから。

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感受性を養うにはどういったことが必要ですか?

やはり、家庭環境が大きく影響すると思います。両親がどのような感性の持ち主なのかによりますし、子どもだけで感性を磨くのは難しいことですから。どんな色や形が美しいものかとか、どんなメッセージを持った作品に共感するのかとか。どんなものに価値を見出すのかは、教育環境によって異なります。そして、子どもには、子どもの感情の起伏を受け止められる大人が必要です。自分の中にあるさまざまな感情に触れることで、表現方法の幅ができるのだと思います。

オープンマインドなヨーロッパ人と日本人では表現方法に違いはありますか?

確実に、表現者にとって環境が異なりますね。日本は、みんなが同じ時間帯に同じ教育方法で、同じ学科を学んでいるという教育環境にあります。だから、みんなと同じ方向を向いていないと、イジメられたりする。個性が芽生えにくい環境にありますよね。そもそもバレエの発祥地はヨーロッパですから、環境の違いは当たり前なのですが、日本の美徳とされる「内に秘めた感情」は見ていて分かりにくいもの。だから外に発することが重要なことなんです。もっと自己の表現が自由になれば、文化は育つものだと思います。

Kバレエ カンパニーを率いていく、アーティストを誕生させたいと思います。

教育者として心がけていることは?

僕は、メンタル的に疲れている状態を少しでもラクにしてあげたいと思っています。バレエについては、子どもの才能が確かなものかどうか、ジャッジできるエキスパートであるかどうかを大切にしています。バレエが大好きで、ダンサーとしての将来に目をキラキラさせている子どもでも、ご両親がその子に誤ったアドバイスをして、才能の芽を摘んでしまうことも少なくない。それは、とても可哀想なことなので正統な考えのもとに教えてあげられる人が必要。バレエ教師として国家資格がない日本だからこそ、舞踏家の基礎を持った本物のバレエダンサーがいるスクールでありたいと思います。

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「Kバレエスタジオ」では何を学んで欲しいですか?

健康的な競争心です。バレエスタジオの中でトップを目指し、嫉妬やねたみに負けず表現し続けること。映画「ブラック・スワン」をご覧になりましたか?少しデフォルメされているストーリーではありますが、バレエの世界をとてもリアルに描いていて、バレエはまさにスピリチュアルな部分での闘いだと思います。あれくらいストイックに物事を突きつめないと、分からないことがある。日々自分と葛藤し、涙を流しながら才能や努力、センスや運といった課題をクリアしなければ舞台には立てないんです。そうした厳しい教育の中でも前を向いて、世界に通用するバレエダンサーを目指して欲しいです。

全クラスピアノ生演奏でのレッスンをされるそうですね。レッスン環境でのこだわりを教えてください。

ピアノの生音は、音感や音の起伏を養ってくれるので、知らないうちに、その音楽に自分が陶酔できるようになります。デジタルな音を聴いていると、一辺通りの表現しかできなくなってしまいます。表現力や身体性を養う上では、ピアノの生演奏であったり、身体に負担の少ない柔らかい床など設備面も重要なポイントです。ただ、それより大事にしているのは、先生と生徒のコミュニケーション方法やカリキュラム全てに、僕のメソッドが生かされているということです。自らの経験を基に、バレエに必要な要素と技術を習得できるよう、年齢やレベル毎に合わせて取り組む内容が異なる教育メニューを取り入れています。

最後にアーティストとしての展望と、カンパニー主宰者としての展望をお聞かせください。

ダンサーとしては、一度お話した通り、40代なのでスピリチュアルにバレエと付き合っていくことになると思います。自分のパッションが尽きないうちは、舞台で想いのままに演じていきたい。カンパニーの主宰者としては、次世代を担う子ども達に素晴らしい人間になってもらうため努力します。そして、その有能な人材の中から、Kバレエ カンパニーを率いていく、アーティストを誕生させたいと思います。

INFORMATION

9/1[日]グランドオープン!
K-BALLET 福岡スタジオ

熊川自身の体験に基づく独自のメソッドによる、世界水準の良質な教育が受けられるバレエスタジオがオープン。子供から大人まで、プロ志向の方から趣味で始める方まで、幅広い層に向けた教育環境となっている。教育陣はしっかりとしたプロとしてのダンサー経験と教育を受けた、「ティーチャーズ・トレーニング・コース(T.T.C.)」のカリキュラムを修了した者のみが指導にあたる。

オープンに先がけ、夏季特別講習「SUMMER SCHOOL 2013」が開催される。
期間:2013.8/10[土]〜8/14[水]全5日間
福岡スタジオオープン記念特典もあり。※締切8/7[水]迄

K-BALLET 福岡スタジオ[福岡市中央区天神1-7-11 天神イムズ6F]
詳細はこちら

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  • 熊川 哲也[Tetsuya Kumakawa]
    アーティスト / K-BALLET COMPANY主宰
    北海道生まれ。10歳より久富淑子バレエ研究所にてバレエを始める。1987年に英国ロイヤル・バレエ学校に入学。89年、ローザンヌ国際バレエ・コンクールで日本人初のゴールド・メダルを受賞。同年、東洋人として初めて英国ロイヤル・バレエ団に入団し、同団史上最年少でソリストに昇格。93 年、プリンシパルに任命された。 98年に同団を退団し、99年、自身のバレエ団であるKバレエ カンパニーを創立。芸術監督として、古典作品の上演を中心に活動を続け、これまでに「ジゼル」「眠れる森の美女」「白鳥の湖」「くるみ割り人形」「海賊」「シンデレラ」など、自身の版として古典全幕作品だけでも9作ものレパートリーを上演・主演。2012年1月、東京・渋谷Bunkamuraオーチャードホールの初代芸術監督に就任。2013年春に紫綬褒章受章。

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