VOICE 来福した旬な著名人にお話を聞いてきました。
香蘭ファッションデザイン専門学校卒業後、インポートセレクトショップ・広告デザイン会社のマーチャンダイザーを経て、現在は編集を中心にスタイリングまで行う。ファッションをより身近なものにしたいと願う良いお年ごろ。
「神は細部に宿る」という信念によりつくり出される、高い縫製技術や体のラインにとらわれない独創的な形の服が特徴の『ANREALAGE』。2016-17秋冬でパリコレクション4シーズン目が終了。数々のジャーナリストが賞賛したという独創的なショーを展開する『ANREALAGE』のデザイナー・森永さんが、先日新作予約会のため来福。今季、テクノロジーを生かした服で圧倒的な存在感を放った彼のクリエイションに触れてみたい。
他にない視点で服をつくること。コンセプトの組み立て方は毎シーズン違いますが、いつも言葉をアイディアソースとして、今どういう視点で洋服を考えているかを表現しています。
ブランドのコンセプトをぶれずに伝えるための強い服。パリコレには公式と非公式のスケジュールがあって、9日間の公式カレンダーに入るのが難しいんです。1日で約10のブランドがショーを実施するので、毎年人気の時間帯を巡り争奪戦がありますし、全体でも100ほどのブランドしか入れないので、いつも全く気が抜けないです。
他にない視点で服をつくること。コンセプトの組み立て方は毎シーズン違いますが、いつも言葉をアイディアソースとして、今どういう視点で洋服を考えているかを表現しています。ひとつのテーマを決めて、それに対し様々な疑問をあげていきます。その投げかけに対して、「YES」・「NO」を判断していきます。例えば2016春夏のコレクションは「反射」をテーマにしようと決めたら、跳ね返す対象となるものは現象か、非現象なのかとか。反射する2つのものは同じものなのかなど考えます。結果、「日常」と「非日常」を洋服で表現しようと決めます。白い光をあてたら、カラフルな光が反射するようなテキスタイルをつくったり。パターンも反転線の向きや位置を変えることだけにこだわってつくったり。細かい部分では、ボタンも反転させながらつくったり。感覚的にデザインするよりも、ひとつのテーマについてそれぞれのあるべき姿を見出していきたいです。美しいとされるものや定番的なものをテーマにして、それがこんな視点でも見られるものだということを提案しています。
反骨精神がある人。 歩きや表情で新しいことをやってやろう という気持ちがにじみ出ている人を選びます。ショーの時は200人ほどを直接見て、大体20人に絞ります。
いつも新しいことを取り入れたいと思っています。
テーマは「NOISE」。ノイズという意味なきものに、意味を込めたコレクションです。今回はプログラマーでアーティストの浦川通さんと協業しました。様々な柄の情報を暗号のようなノイズコードに変換して生地に織り込み、会場に設置した透明フィルターの前にモデルが立つと洋服の柄が浮かび上がるという技術を使いました。
2016-17秋冬コレクション「NOISE」より
ファッションから遠く離れた分野の人を巻き込み、ファッションをつくるのは面白いですね。いつも新しいことを取り入れたいと思っています。
そうですね。ノイズといえば、まずテレビの砂嵐を浮かべました。あれは情報を何も伝えない画面ですが、その画面を見ているのがとても好きで。今の時代、情報が多すぎて、自分にとって必要なものを見いだす力が弱くなってきている気がしています。ノイズばかりの情報化社会におけるファッションのあり方に向き合い、だからこそ最も無意味なノイズというものに、意味を込めました。
着る人の日常に寄り添うことを願いながら、しかし着る人の日常の違う扉をあけられるようなことができれば。
毎日観ている景色に、1着でも力を持った服が目に入るだけで日常は変わると信じています。
日常は、滅多に変わることはないと思います。その中で、洋服は唯一残された日常を変えることができる手段だと思っています。美術館にあるアート作品はいいと思ってもすぐ持ち帰れるものではないですし、洋服のように毎日肌に触れて感じられるものでもない。毎日必ず洋服を選び、それを着るという当たり前すぎる行為で、こんなにも精神的に影響を与えてくれるものは少ないと思います。だから洋服を通して、その変わらぬ日常を少し変えていきたいと思っています。音楽や映画ではその人がどのような趣味嗜好なのか外見から伝わることはありませんが洋服はその人の意思も嗜好も直接表現できてしまいます。毎日観ている景色に、1着でも力を持った服が目に入るだけで日常は変わると信じています。
無意識に洋服を着ないこと。自分が着たい服を、身体でも心でも着ること。
撮影協力:Saturday . AND READY
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