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  • 2018.10.14 Sun

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岡島です、恐縮です #07 「衣替え麗日」

TEXT BY 岡島 佐和

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岡島 佐和
プロジェクトマネージャー

瓶ビールならサッポロ、ワインなら白、つまみなら鳥刺し派です。音楽なら、古いほうがいいですね。 あ、今日ですか?空いてますよ、今夜なら。

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満、4年目の街にて

4年前の秋。地元・長崎を離れ、はじめての一人暮らしへの期待を膨らませ、カバンと身ひとつでやって来た福岡。辞めたばかりの銀行員にしては明るすぎる茶髪のショートカット、「とりあえず脚は出せる時に出しておいた方が良い」という今では恐ろしく刹那的とも思える思想のもとのミニスカートは、その思想の終焉からしばらくして、今年のはじめの衣替えの時に安らかに葬りました。

当時は右も左も見当もつかない田舎っ子であった私は、家具といえば当時の話題であったIKEAに即日駆け込み、2人未満作業不可の家具をたった1人で組み立てて全身筋肉痛で朝を迎えた日も。

生来実家暮らしの娘は、他ならない自分以外に、空腹を満たしてくれる人が周りに本当にいなくなったのだと夜になるともう冷え冷えとしてきた一人の部屋で、調理器具もろくに揃わない台所に頼ることもできず、間に合わせの唐揚げ弁当に涙したこともあったような。

今では夜な夜な居酒屋の排気口から放出される神秘の誘惑剤である焼鳥の香りにおびき寄せられては、あれからがんばって構築したはずの一人部屋には度々と帰らずの日もあるほどに。おかげで市内であればある程度の酔いには屈することなく、地図も不要の迷いなしでそんな部屋へ帰宅できる能力すら身に付けることができました。

そしてこうやって、街の情報を皆さまにお伝えするはずの貴重なメディアの場を無駄遣いし、私情ずっぷりの話題を惜しみなく展開もさせていただいています(恐縮です)。

4年、4年。

引っ越してきた時とちょうど同じ時期に生まれた初めての甥っ子は、声も消え入るように弱々しく、小さく泣いていた赤ん坊から、今やまるで使命感を持ったように日々突進や破壊を繰り返す、元気な爆裂ボーイへと変貌を遂げました。あと先日は初めての運動会にも出場したりして、足は遅いけど、声は大きな子です。

恐ろしくあっという間であった4年。しかし凄まじく変化をもたらした4年。オリンピックも4年間隔にしているくらいだから、何かこの4年には意味があったりするのか。世界規模のトリビアへの挑戦には、おそらくいとも簡単にネットが済ませてしまうだろうから、今日はこの辺で置いといて。

場所は遠からずでも、ちょっと違う街に住まうのもいいのかな。「もう」4年経ったしね。

目下、4年目の街で

その店を訪れたのは、また冷え冷えとしてきた、秋晴れのさわやかな日。記憶のあるうちの同一人物はせっかく2度ほどもおすすめもしてくれていたのに。無精にもそれから一年ほども時を経てしまった今年の秋、「通りかかった」のひょんな理由で、ようやく足を運ぶことにしたのでした。

それ以外の福岡市内の喫茶店であれば、少々名の知れたお店の一通りはお邪魔したことのある私が、そこだけを不思議と宿題としていました。まぁしかし、宿題は極限まで眠らせる子供であった私が、早々に取り組めるわけもないのか。

お店の名は「Cotty」。福岡市中央区は高砂にあるコーヒーショップです。言わずと知れた、というか、あまり知れていないかもしれません。似たような道がいくつも通る高砂エリア、細めの道沿いの住宅地のマンションの1階にひっそりと入り口だけが忽然と現れる愛らしい出で立ち。

店内は入口から見て少し縦長の、ほぼお店の全長と同じサイズの広々とした大きな窓があり、開放感のある伸びやかな印象の空間。カウンターの背に配してあるブロンズ色につやめく壁が、そこから入る広々とした光を上品に照り返しています。古いお店のようだけど、長きに渡り美しく整えられてきたであろうそのお店には、なんとなく歳をとってもおしゃれをして姿勢のいいお婆さまを見かけたときのような、尊敬やあこがれの気持ちが湧いてくる、そこはかとない居心地と、どこか背筋が伸びるような思いと。そんな独特の心持ちにしてくれる場所です。

BGMは、終始入り口から度々流れてくる風が連れてきたような、耳馴染みの良い軽やかなギターの楽曲。個人的に選曲がどツボであります。

■The Third Man[Anton Karas]

カップはそれぞれ異なるようで、お隣のマダムは小梅柄カップ、そのお隣のファッショナブルお姉さんは大胆な青磁のモダン柄。本日の私にはシクラメンのあしらいのカップが巡ってまいりました。ありがとうございます。

お店はご夫妻がお二人で切り盛りをされているようでした。お客のマダムによる矢継ぎ早な話題フリにも都度優しく相槌を打たれていた奥様。少し控えめに見える奥様の過去に見る娘時代は、さぞ可憐でお美しかったんだろうと。

にしてもこのお店は何より、風通る空間と光がとても気持ちがいい。店内にもいくつか装飾はあるけれど、入り口を見つめていればそこに動く生きた絵が飾られているようで。

メニューは喫茶はもちろん、モーニングは9時から¥500〜、お食事は単品は¥600から、カレーライスや高菜ライス、ナポリタンなど喫茶店にはあってほしいメニューというのを、だいたい取り揃えておりました。14時まではアフターコーヒーは¥100、お昼ならコンビニでお弁当とお菓子とコーヒーを買う金額感で、この空間付き。豊かな暮らしとは、稼ぐことだけにあらず、お金は使いようではないかとつくづく考えさせられるようです。

まぁしかし、4年「も」近くにいたはずの場所。4年「では」たどり着けなかった場所。住まった場所をまるで知っていた気になっていた自分、ちょっと古くさいとは言われますが「店のレパートリーは足で稼ぐんだ」という意気込みの時代を、早くも忘れつつあった自分を顧みられずにはいられないほどでした。

Cottyの美しく大きな窓は、今は面する駐車場にある車や、通りからは皮肉なことに某コーヒーメーカーさんの自動販売機の存在によりほとんどをその姿を全身を見渡すことができません。本当に美しいことや大切なことは案外、いじわるなジャイアンみたいな時代のかくれんぼに、巻き込まれがちだったりして。そういうことはやっぱり、丁寧に見つけていかなくては。

続、5年目の街にて

あの時に涙しながら唐揚げ弁当を食した私と、今では実にいろいろな方々が食事をともにしてくださるようになりました。そして今年も早いことに3ヶ月を切った今年には、おそらく年末にかけてまたたくさんの”夜”が待っている予感もしています。幸せです。

詐称を疑わることもありますが、平成生まれの時代ももうじき終わり、来年は新たな年号を迎えますね。4年で括ると「福岡生活4年が2回目の1年生」、なんかややこしくなりましたが、はじまります。

さて、迎える5年目、「たったの」5年、「されど」の5年。なんか格好良くて大それたことを言ってみようと思ったけれど、まずは第一歩として今日、もうタオルケットで眠るのはやめようかと。あとはきたる冬に備えて、毎年春に消してしまう冬ソングを、またこつこつと温めておこうかな。「冬がはじまるよ」、3回目のダウンロードも近々。

ひんやり冬めいてくるだろうCottyの風がいつも、気持ちよくいられるように。さ、衣替えをしなくては。

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岡島 佐和
プロジェクトマネージャー

瓶ビールならサッポロ、ワインなら白、つまみなら鳥刺し派です。音楽なら、古いほうがいいですね。 あ、今日ですか?空いてますよ、今夜なら。

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