VOICE 来福した旬な著名人にお話を聞いてきました。
鹿児島出身。低血圧、胃腸が弱い6月生まれ。最近手相やおみくじで健康面に注意と言われたので、怯えながらひとまず積極的に鉄分を摂ることを心がけています。
2017年、短編映画『そうして私たちはプールに金魚を、』で第33回サンダンス映画祭(ショートフィルム部門)のグランプリを日本映画で初めて獲得した長久允監督の長編デビュー作、映画『ウィーアーリトルゾンビーズ』が2019年6月から全国で公開されます。本作は、本年度のサンダンス映画祭にて日本映画初となる審査員特別賞オリジナリティ賞を受賞。さらに2月に行われたベルリン国際映画祭では、ジェネレーション14plus部門のオープニング作品として選出され、準グランプリにあたるスペシャル・メンション賞を日本映画で初めて受賞するなど、まさに世界を席巻中。そんな大注目の長久允監督と、今作が映画初出演ながら、主演の4人(二宮慶多、中島セナ、水野哲志、奥村門土)に抜擢された福岡市在住の現役高校生、似顔絵師としても活躍中のモンドくんこと奥村門土くんに本作の製作秘話をうかがいました。
長久監督 受賞を目指して作っていたわけではなく、初めての長編映画ということで僕が思っていることや、好きな表現を純粋に詰め込んで作った映画だったので、それが受賞というか客観的な国際評価を貰えて単純に嬉しくて。自分が作ったものがそういう評価を得れたことは映画が好きな者として嬉しかったですね。映画祭への招待は突然の連絡でしたし、授賞式も発表の時まで何も教えてもらえなかったのでドキドキしました。(笑)
門土くん サンダンス映画祭の授賞式を家族全員で見ていて、賞を獲った時は嬉しかったです。監督が「イェーイ!」って言った時は笑いました。(笑)
長久監督 ガッツポーズしながらピョンピョン跳ねて前に出たからね。(笑)
長久監督 賞よりも手前にいろいろな場所で上映会が行われ、上映後にお客さんの感想をたくさん聞かせてもらったんですが、想像以上に声を出して笑ってもらえたのが嬉しかったです。また、アメリカでは新しいジャンルのコメディ・エンターテイメントとして楽しんでもらえて、ベルリンではより哲学的な文芸としての角度で映画を観てもらえたことに驚きました。どちらの要素も含まれてるなとは思っていたんですけど、そこまで極端に評価のされ方が違うのも興味深いなと。
長久監督 そうですね。あまりそういう映画もないので。僕もすごく大好きな映画『パルプ・フィクション』とかがそうだったんですけど、ジャンルが規定できない映画がすごく好きなので、そう捉えてもらえているんだなって嬉しかったです。
長久監督 そうです。普通のサラリーマンとして働いていて、映画を作らせてもらってます。今は映画や次の作品の準備で結構スケジュールが忙しくなっているので、映画だけに集中させてもらっています。ちょっとMVもやったりはしますが、CMなどの広告は今はやってないですね。経歴としては珍しい、うちの会社の歴史にもいないですね。
門土くん はい。
門土くん 前髪がずっと一緒だからですね。(笑)
門土くん まさか決まらないだろうって思っていて、家族で「もし決まったらどうする?」って話していました。まさか本当に出演することになるとは思わなかったです。
門土くん すごい人だなって。最初会った時はお父さんみたいに髪が長くて印象的な人だなって思いました。
門土くん たくさんの人に会ったりいろいろな経験をしたから、感じ方とかもちょっと変わったと思います。今まで何気なく見ていたものに対しての見方が変わりました。
長久監督 そうですね。僕は学生の頃も映画を撮っていたんですけど、こういった表現方法は全然使っていなくて、十数年広告とかMVをやらしてもらって、こういうことを伝えたかったらこういう表現をするととても楽しく良く伝わるっていう経験をいっぱいしたので、その技術が身についたのは大きいです。あとすごく映画が好きなんですが、昔の映画って今の映画よりより実験的に面白いアングルとか色々やっていて、ここ20年くらいの映画が定形になっちゃってるだけなんじゃないかなとも思っていたので、昔みたいにいろいろアグレッシブにやっていいんじゃないかって思いもあり、広告で培った技術を生かして自由にやってみました。70年代〜80年代の日本の映画とか海外の映画でやってる技法を今回そのままやっているシーンもありますね。
長久監督 ヒカリくん(二宮慶多くん演じる本作の主人公の一人)のシチュエーションって僕の幼少期と似ているところがあって、共働きの両親がいてずっとゲームばっかりやってた子供だったんです。なんとなくストーリーが思い浮かんだときに、その頃思っていたことや大人に対して考えていたこと、感情などをちゃんと伝えたいと思って作業をしていくうちに自然と物語が構築されていったという感じですね。僕もバンドをちょっとやってたりしていました。
長久監督 そうですね。1日に10分とか30分使って1ヶ月ほどかかりました。「今日はこのセリフだけ書こう!」と思ってバーっと書いたりとか、そんな風にバラバラで好きなところから作っていって、後で構成していくという作り方をしました。ちょうど二人目の子供が産まれて育児休暇を取っている頃だったので、育児を妻とバトンタッチして映画の作業に充てられる時間が1日に30分とか1時間しかなくて、その中で勢いで書いていました。
長久監督 大変ですね!(笑)CMではよくあることだったりするんですけど、映画ではたぶん珍しいと思います。僕はどういうアングルで撮られるかということにもちゃんと意味が込もっているべきかなという想いで映画を作っていたので、現場でなんとなくカメラを回すことよりも、ちゃんと意図を持たせて撮りたかったんです。なので必要な行為だなと思って今回そういう作り方をとりました。
門土くん 僕がやっていて一番楽しかったシーンは、ゴミ処理場で演奏するバンドのシーンです。全部ゴミだけのセットから始まり、ホームレスの人たちに囲まれて移動しながらみんなで演奏し、最後にビルの屋上にあがって楽器を弾いた時が一番気持ちよかった!劇中バンド『LITTLE ZOMBIES』のMVのクライマックスシーンです。
長久監督 歌詞は僕が書きました。作曲はニューヨークに『LOVE SPREAD』っていうバンドがいて、僕がすごく好きなバンドだったので、「やってくれないか」みたいなDMを送ってやり取りが始まりました。
長久監督 そうですね。細かく数えると90曲くらいありました。音楽もすごく好きなので、撮影する前からここにこういう音楽を入れていこうっていうのを決めてシナリオに書いておいたんです。権利をクリアできないものは新たに描き下ろしてもらったりしているんですけど、ほぼイメージ通りのものが仕上がっています。
長久監督 あれもああいうものにしたくて、なかなか口でイメージを伝えても伝わらなかったので、イメージのトラックで実際にやってみますねって言って僕がやった音源を役者さん(戌井さん)にお渡しして再現してもらいました。
長久監督 ほんとですか。嬉しいなぁ。(笑)
長久監督 子供の頃はずっとやっていて、でも中1の時全部捨てちゃったんです。なんかもう一生分のゲームやったなって思って。もういいやってなってそこからずっとやってないんですけど、それまではほぼゲームしかしてなかったです。なんかふと捨てちゃったんですけど、でもやっぱりその時ゲームが教えてくれたことだとか、ゲームから得た人生の教訓とかがすごく大事だなって思って、この映画はゲームというモチーフで作ってみたらどうかなと思いました。
門土くん ゲームはあんまりやってなくて…。ゲームよりは漫画とか小説が好きで、小さい頃から読んでいます。数がすごい量あって、家に3〜4千冊くらいあります。
長久監督 3〜4千冊!?超すげーなー!(笑)
門土くん 家の天井近くまで本棚があって、しかもその壁の全面が本棚で。そこにも入り切らなくてリビングにあったりします。
長久監督 まじ!いいなぁー。行きたい!
門土くん ハマってる漫画…やっぱり『ジョジョの奇妙な冒険』とか面白いですね。ジョジョが一番好き。初めて読んだ時すっごい衝撃的でした。こんなに面白い漫画があるんだ!って。
門土くん 岸辺露伴とか、あとは五部に出てくるリゾット・ネウロってやつです。
長久監督 僕は三部くらいで離脱してるから…
門土くん (笑)
長久監督 小説もいつも読んでるよね。
門土くん はい、小説も好きです。
門土くん 貴志祐介さん。『悪の教典』とか好きですね。あと今度『WE ARE LITTLE ZOMBIES』の小説も出るからそれもめっちゃ楽しみです。
長久監督 あー、やべーなー!プレッシャー!(笑)
長久監督 そうですね、映画では大人側のことをあまり描けなかったですし、映画化したかったけど予算やスケジュールが許さなくて描けなかったシーンがたくさんあって、もったいないなって思ってたところに小説化のお話をいただいたので、2倍くらいの内容になっています。
長久監督 ありがとうございます。6月6日に発売します。
長久監督 わざとそういう意図があるわけじゃないんですけど、僕も大人ではあるんですが、普段大人や社会に対して腹が立ったり、嫌だなって思ったり、諦めたりしている気持ちをセリフにするときに10代の方が適切だったりして。34歳の僕が思っていることなんだけど、大人でそれをやるとほんとヤバいやつみたいになっちゃって。(笑)若い10代の子たちの方が社会問題とか常識や偏見に対してフラットな眼差しでものを見ているところがすごく好きだったり、それを尊重したいなっていう想いがあって、自然とその年代の話を書いちゃいますね。
長久監督 大人になってからエモーショナルな瞬間ってあまり訪れなくて、そのドキドキする瞬間を描きたいって思ったときにやっぱり大人じゃ描けないなって思っちゃって。過去のティーン・エイジャーの頃を描くのはそういうところがあったりします。
長久監督 作りたいものがたくさん頭の中にあって、ラブストーリーやSFとかファンタジーもやりたいなとか、色々なことを思っています。広告代理店にはいるんですけどやっぱり映画をやりたい。あと想像を超えてたんですけど、僕の作品は海外での評価が高いので、アメリカやヨーロッパなどの海外でのものづくりにも挑戦してみたいなって思っています。でも英語は「Yes」くらいしか喋れないです。それはそれで面白いかなって思って。「OK」と「NG」が言えればまぁなんとかなるかなって。(笑)
門土くん 今回俳優に挑戦してみてとても楽しかったので、将来的には俳優もやって絵も描くという風にどっちも両立してやっていきたいなって思います。
長久監督 この映画は13歳の子どもたちが冒険していく映画で、ティーン・エイジャーのために作った映画ではあるんですけど、過去ティーン・エイジャーだった大人の方たちが観ても、例えば50代の方が観ても何か思うところがある映画に仕上がっていると思うので、たくさんの人に観てもらえればと思っています。複雑な映画なのでそれぞれに思うことが違うと思うんですよ。それでいいなって思って作っているので、ぜひ観てもらえれば嬉しいです。あと、福岡に来たのが実は初めてで、しかも今日来て今日帰るんですけど、もっと10泊くらいしたかったなって思ったのでまた来ます!
門土くん この映画は色合いとかアングルがすごくかっこいいので、そういうところをみんなに観てもらいたいです。あと今まで福岡では似顔絵の絵描きとしての僕で知られていたけど、俳優としての僕をこの映画で観てほしいです。
2019年06月14日[金]公開
©2019“WE ARE LITTLE ZOMBIES”FILM PARTNERS(電通/日活/ソニー・ミュージックエンタテイメント/パルコ/ROBOT)
■映画『ウィーアーリトルゾンビーズ』
https://littlezombies.jp/
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